北風がつめたい季節になってきました。そよそよとふく春風、びゅるびゅるとふきつける冬の風……いろんな種類の風がありますが、それは毎日工場のねこたちがつくりだしているもの––––今週紹介する「ねこの風つくり工場」はそんな舞台設定で、くりひろげられるお話です。
ねこの風つくり工場とは?
町の中で大きな丸いタンクを見かけたことはありませんか? これは、そんな丸いタンクを持つ工場のおはなしです。
工場で働いているのは、町に暮らすねこたち(飼いねこも、のらねこもいます)。そのねこたちがつくるのは、あたたかかったり、つめたかったり、いいにおいがしたりするいろんな風です。
風をつくるのには、季節の葉っぱや花びらなどさまざまなものが必要ですが、いちばんの原料は、なんだと思いますか? それは、人間の子どもやおとながわらったときに口元からこぼれる、「わらい声のかけら」! 幸せそうな楽しそうな人をみつけると、ねこたちは人間にはみえないそのかけらが落ちないか、じっと待っているのです。
工場では、たのしい出来事もありますが、ちょっとした事件や思いもよらぬトラブルもたくさん! 繊細な「風つくり」の仕事のため、みなで協力しあう姿を描く、小さなお話が各巻3編入っています。
作者のみずのよしえさんは、この童話がデビュー作。こぎん刺し作家としてもご活躍されているみずのさんが生んだ、ちくちくと丁寧につむがれたお話です。
個性ゆたかな社員ねこたち
「ねこの風つくり工場」にはたくさんのねこたちが登場します! ときに厳しいことばも行き交いますが、いつも相手を尊重してはたらいています。あなたの近所のねこに似たねこがいるでしょうか?
ノロロ
主人公の黒ねこ。「わらい声のかけら」をあつめるのが仕事。仕事中、ついついおひるねもしてしまうけれど、気持ちはいつも一生懸命。
工場長
「ねこの風つくり工場」の責任者。怒るとこわいけれど、やさしい工場長。
スノウ
工場の研究員を勤める、すらりとした白ねこ。白衣を着て仕事をしている。
ブラリ
灰色ののらねこ。生まれたときから工場で働いている。同じくのらねこのノロロを弟のようにかわいがっている。
ペロリ
工場の食堂で毎日おいしいおひるごはんをつくってくれている料理長。
ハック
どうしても工場ではたらきたくて、ねこのふりをして入社してきた犬。力仕事はおまかせ。
トラ助
工場の記録係。スノウの助手。トラねこ文字という暗号文字で、実験の記録や、気温、土の中の温度などをノートに記録している。
ナツ
ノロロとともにわらい声のかけらを集める女の子。好奇心旺盛で、思い立ったらすぐ行動!
いくつかのお話をご紹介!
気になるお話の内容を、1巻目の『ねこの風つくり工場』、最新刊の『ないしょのおかたづけ』のなかから1編ずつご紹介します!
ノロロの先輩ブラリが、スノウの研究室にあった「わらい声のかけら」をみつけます。白い紙に大切にくるまれていて、なんだかあまいメープルシロップの香り! 思わずつまみぐいしてみると……「いひひひひ」ブラリの口から思ってもいない声がではじめ……風をつかった「悪いいたずら」をしかけたくてうずうずしてきました。ブラリが食べたのは、この町いちばんのいたずらっ子のわらい声だったのです!
自分で仕事をみつけるように、といわれているノロロとナツ。わらい声のかけらを置いておく貯蔵庫を片付けてみんなの役に立とうと思いつきます。小さなつぼの中に分けられていたわらい声のかけらも、きちんと整えてからびんのなかに戻すのですが、それが思わぬ風を生み出してしまいます! いったいつぼのなかのかけらはどんなものだったのでしょう?
のんびりノロロや好奇心旺盛のナツにひやひやさせられながらも、ほかのねこたちのあたたかな眼差しに、最後はいつも心がほっこりあたたかくなるお話。人に誠実に接することや、責任をもって仕事をすることの大切さも教えくれます。
あなたの町にも丸タンクがありませんか? そこはもしかしたらねこたちのはたらいている工場かもしれませんよ!