小学校を卒業し、自立心が芽生えたり、思春期・反抗期に入ったりする中学校時代。もう子どもじゃない、という気持ちの一方、まだ大人には遠いとも感じる、複雑で特別な時期です。きょうご紹介する『クラスメイツ<前期><後期>』(森絵都 著)は、そうした中学生の心をうごきを、彼らの学校生活から描き出した作品です。クラスの24人、それぞれが主人公になり、24のストーリーが描かれます。
4月、中学生になった千鶴
「若葉色の風が吹きぬける四月、それまでふたつに結っていた髪をポニーテールにまとめて、千鶴は中学生になった。」
舞台となる北見第二中学校は、相本千鶴の地元の公立中学校。入学する生徒の半分は知った顔なのですが、千鶴は小学校からの親友と別のクラスになってしまいました。足取り重く教室に入った千鶴の席は、窓際の一番前。「相本」という苗字のせいで、千鶴にとって、うしろの席の子と仲良くなることは、ひとりぼっちにならないために絶対にはずせない条件です。
後ろの席についた別の小学校出身の榎本志保里(しほりん)に自分から声をかけて仲良くなり、ほかの子ともうまくなじむことに成功した千鶴。でも一方でそうしてクラスに人並みに、勉強も、運動神経も、顔も性格も「ふつう」な自分を、中学校では変えたいという気持ちもありました。
やがてやってきた「部活の選択」のとき、千鶴は自分を変えるため、ちょっとむりをしてしほりんに「運動部のマネージャーになりたい」と宣言しますが……?
「3人グループ」が悩みの種のしほりん ––––2 光のなかの影
「中学校という場所はしほりんにとって、まぶしすぎるくらいきらきらしていた。でも––––ふっとひとりになった瞬間、いまでも、急にこわくなる。千鶴とレイミーは、いつまであたしのそばにいてくれるんだろう?」
声をかけてもらったのがきっかけで、千鶴と仲良くなったしほりん。部活にも入り、楽しい毎日を過ごしていますが、入学からほどなくして「ふしぎちゃん」とうわさの鈴木麗海(レイミー)が仲間入りして、「3人グループ」になったことが気がかりです。小学校のときも3人グループで過ごしていたしほりんは、ほかの2人から仲間はずれにされて傷ついた経験があるのです。
レイミーは自分をじゃまに思っているんじゃないか。考え始めると不安がつのり、レイミーをつい疎ましく思ってしまうしほりん。そんなときクラスで、ある事件が起こり……。
小学校とは何かがちがう? 悪ふざけをしてしまう蒼太 ––––3 ポジション
「蒼太は決めた。キャラを変えよう、と。一年A組の結成から約二ヶ月。いまならまだ間にあう。」
小学校のころからお調子者としてみんなを盛り上げてきた蒼太。中学校に入ってからも、ボケ役の心平につっこむ役として、派手にふるまっています。ところが、最近みんなが蒼太を見る目が冷たいのです。ウケを狙おうとしてクラスの女子の性格や容姿をからかったために、信頼をなくしているよう。ちょっとやりすぎたな、と蒼太は反省します。
ところがその矢先、教室の窓ガラスが割れる騒ぎがあり、第一発見者だった蒼太が容疑者にされてしまいます。自分はやっていないと説明しても、日頃のおこないのイメージがあるために、みんなの視線は冷たいまま。蒼太はいよいよ、キャラを変えなくてはと思うのでした。
24人の中学1年生の1年間が、24のストーリーで浮かび上がる
ご紹介した3人の物語は、『クラスメイツ<前期>』の最初の3章です。このように、1年A組24人の物語がつづられ、それぞれに少しずつ他のクラスメートが登場することで、みんなのキャラクターや生活が浮かび上がってきます。
友達との関係、好きな人のこと、勉強の悩み、自分にないものを持っている子への嫉妬や憧れ……。思わず「あるある!」「わかる!」とうなずいてしまう、この時期ならではのストーリーがたくさんつまっています。
かつて中学生だった方にも、今まさに中学校時代を過ごしている子にも、まっすぐ届く『クラスメイツ』。大人のみな、読んだらなつかしい記憶がよみがえるかもしれません!
★刊行時の森絵都さんのインタビュー記事を公開しています! ぜひ、合わせてお楽しみください。