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子育てと絵本の相談室

保育士が答える! 0123歳のちょっとしたお悩み 第12回

片づけはしないのに、お手伝いはしたがって困る!

2021.12.25

子どもたちは、お手伝いをしたがります。
でもそれは、おとながやってほしいことや、やってほしいタイミングと合わないことが多いかもしれません。

掃除機をかけていると、「わたしがやる!」。揚げ物をしようとすると、「手伝ってあげる!」。散らかった部屋をさっさと片づけて買いものに行こうと、おとなが掃除をはじめると、「やってあげる!」。

それならばと、でかけるときに「遊んだものを片づけてから行こうね」と片づけを期待して声をかけても、きこえないふり。ちゃっかり、先に玄関に行って、「ママ、片づけて!」と言ってくる。

思わず、「いいかげんにしなさい!」と言いたくなってしまうし、お手伝いをしてほしいタイミングではないときには「もういいから!」と言いたくなる。

「ありがとう」「きれいになったね」保育園ではこんな言葉をかけている。

片づけについて困っているおうちの方は多くいると思います。

保育園では、子どもたちが片づけやすいように写真入りで表示をしていることがありますが、きちんと表示をして、「そこに片づけなさい」と言うより、保育者が根気よく同じ場所に片づけるのがいいなあと、わたしは思っています。

写真の表示通りに片づけている子には「ちゃんと片づけられたね」と言葉をかけ、適当な場所に片づけた子には「そこは違うよね。こっちにしようか」と言葉をかけるよりも、保育者がやっているのを見て手伝おうとしてくれたときに「ありがとう」、自分で片づけようとしているときには、どこへ片づけても「きれいになったね」、「自分で考えて片づけたんだ」、こんな言葉がでてくるといいなと思う。

できたことをほめるより、「ありがとう」と言いたい。それに、子どもたち自身が、片づける場所を自分で選べるような空間を保障したい。そんな思いがわたしにはあるからです。

「片づけは楽しくないからやりたくない」という気持ちにも寄り添う。

ということで、子どもたちの「やってみたい」「おもしろそう」という気持ちからでてくる「お手伝いする!」は、そもそも誰かのためになる手伝いとはちがうもの。結果を期待するのがまちがっているのかもしれません。

そして、「片づけは楽しくないからやりたくない」という気持ちにも、「そうだよね。やりたくないよね」と寄り添うしかない。

子どものやりたい気持ちを大事にしながら、自分で片づけることができるように根気よく伝えていく。子育てって、本当に根気がいるなあと思います。

家での片づけに関しては、多少、散らかっていても気にならない人は「まあ いいか」と放っておくのもありですし、気になって仕方がない人は自分でさっさと片づけるのもありです。

そんなおとなを見て、子どもは育つ。でも、片づけてくれなくてイライラするときは、気分転換にこんな絵本を読んでみませんか?

片づけをテーマにした楽しい絵本。

『どろんこ おそうじ』(さとうわきこ作・絵、福音館書店)

片づけをしないこいぬとこねこに、ばばばあちゃんは言います。「いつまでたっても おそうじしないなら、しまいに ばあちゃんは どこかへ いっちゃうよ」。そうじを始めたこいぬとこねこは、ほうきやぞうきんで遊びはじめてしまう。飛んできたぞうきんがあたった動物たちとけんかになるのだけれど、それを見たばばばあちゃんは、どろんこ遊びだとかんちがいして遊びだす。ばばあちゃんのようなおとながそばにいたら、子どもたちはあきれて片づけられるようになるかもしれません。以前は、ばばばあちゃんがわたしの憧れだったのですが、だんだん、本当にばばばあちゃんのようになってきたかも。

『ノンタンぱっぱらぱなし』(キノヨサチコ作・絵、偕成社)

わたしの子どもたちとも、園の子どもたちとも、一緒によく読んだ1冊。35年も前に発売された本なのに、ちっとも古くなっていない。片づけないノンタンは、うさぎさんやくまさんに怒られながらも笑ってる。このようすを見た子どもたちは「だめなんだよね!」と言う。片づけないのでいつも保育園のみんなにしかられるひろくんは、真剣な顔をしている。おとなに言われるのではないところが、ノンタンのいいところ。最後にノンタンが「かたづけると、すっきり いいきもち」と言う。お手伝いも片づけも、すっきりいい気持ちで終われるようにするのがむずかしい!

ノンタン公式サイト

『きれいずきティッチ』(パット・ハッチンス作、星川菜津子訳、童話館出版)

お兄ちゃんとお姉ちゃんがいるティッチの部屋はきれい。お母さんは、お兄ちゃんのピートとお姉ちゃんのメアリにも片づけるように言う。ティッチは、ピートとメアリがいらなくなったおもちゃや衣装やゲームを、「ぼくがもらうよ!」と全部自分の部屋へ。お兄ちゃんやお姉ちゃんが使っていたものや遊んでいたものは、小さいティッチには宝物。ピートとメアリからもらったおもちゃたちがぐちゃぐちゃに積まれた中で、宇宙服を着たティッチは楽しそう。たとえ部屋が汚くても、それがいいってことあるよなあと思える場面。絵の色使いもよくて、汚い部屋も楽しく見えるから不思議です。


安井素子(保育士)
愛知県に生まれる。1980年より公立保育園の保育士として勤める。保育士歴は、40年以上。1997年から4年間、月刊誌「クーヨン」(クレヨンハウス)に、子どもたちとの日々をつづる。保育園長・児童センター館長を経て、現在は中部大学で非常勤講師として保育と絵本についての授業を担当。保育者向け講演会の講師や保育アドバイザーとしても活動している。書籍に『子どもが教えてくれました ほんとうの本のおもしろさ』(偕成社)、『0.1.2歳児 毎日できるふだんあそび100ーあそびに夢中になる子どもと出会おう』(共著、学研プラス)がある。月刊誌「あそびと環境0・1・2歳」(学研)、ウェブサイト「保育士さんの絵本ノート」(パルシステム)、季刊誌「音のゆうびん」(カワイ音楽教室)で連載中。

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