今週は、1985年の発売以来、たくさんの子どもたちに読まれてきた、岡田淳さんの『二分間の冒険』(太田大八 絵)を紹介します。元・小学校の図工の先生でもある岡田淳さんが得意とする、学校からはじまるファンタジー。『二分間の冒険』というタイトルでありながら、読み応えのある厚みのあるです。いったいどんな「二分間」が待っているのでしょうか。
黒猫
主人公の悟は、ちょっとお調子ものの平凡な小学6年生の男の子。ある放課後、掃除をさぼろうと保健室に向かう途中、言葉をつかう黒ネコ「ダレカ」に出会い、ワープしてしまいます。突然のできごとにとまどう悟に、ダレカは言います。
「あわてるなよ。ちょいとおれとあそんでくれよ。いいかい、こいつはゲームだ」。
悟が降り立ったのは、元の世界と時間の流れが異なる世界
のゲームとは、「この世界でいちばんたしかなものの姿」になったダレカをみつける、かくれんぼ。タイムリミットは元の世界の「二分間」。けれども、この世界の二分は、悟が老人になるまでの時間と同等だというのです。もといた世界でさえわからない答えが、この世界でわかるのか……。途方にくれながらも、悟は答えを探して、歩を進めることにします。
竜との戦いはなぞかけゲーム
やがてたどりついた村は、子どもたちだけが暮らす不可思議な場所。しかも、その子どもたちはみな、森の北に住む恐ろしい竜の生贄になることが運命づけられていました。定めから逃れるには、竜の館に住む恐ろしい竜とのなぞかけゲームに勝つしかないのですが……これまでに戻ってきたものはひとりもいません。
悟は竜の館へ向かう途中、いけにえになってしまった子どもは若さを奪われ、老人になっていたことを知る
誰も倒したことのない竜。では、この世界でいちばん確かなものとは「竜」なのか? ひょんなことから、竜との戦いにと同じ顔と名前をもつ「カオリ」と挑むことになった悟は、ダレカとのゲームの答えである〈確かなもの〉をさがしながらも、竜とのなぞかげゲームに勝つ方法を考えていきます。
物語のスリルと哲学的な問いかけを楽しめる
不穏な空気の立ち込める世界を、少しずつ知っていくおもしろさ、竜の館へたどりつくまでの旅路の緊張感、竜との戦いでスリルを味わいながら答えをなぞかけの答え探す楽しさなど、物語の醍醐味がつまった一作です。(思春期ならではのちょっとした恋の芽生えも描かれます!)
さて、あなたにとっての〈確かなもの〉は何だと思いますか? 悟といっしょに物語を読みながらぜひ考えてみてください!