ラッコのラッキーは、海でお母さんとはぐれてしまい、水族館で育てられました。一度は海に帰りますが、とある出来事でまた水族館にもどることになります。そこでラッキーが取り組むことになったのは……? 感動と元気をくれる、実話を元にした物語絵本『ラッキー あるラッコのものがたり』(キャサリン・アップルゲイト 作/チャールズ・サントソ 絵/尾高 薫 訳)をご紹介します。

人間にたすけられ、水族館で暮らすことになったラッキー
ラッコのラッキーは、あるとき波にのまれ、母さんラッコと海ではぐれてしまいました。たどりついた海岸でラッキーを保護したのは、「せのたかい しっぽのない どうぶつ」、人間です。ラッキーは水族館で暮らすことになり、母さんラッコのかわりに、人間からいろいろなことを教わります。石で貝を割って食べること。毛づくろいのしかた。砂の中のカニの見つけかた……。

自然界でラッキーは海へ帰り、野生のラッコたちと楽しく暮らします。大けがをしてしまい、水族館に逆もどりすることになりました。
これまでのように泳げず、海に帰って遊ぶことができなくなったラッキー。「わたしの いばしょは どこ?」と落ち込む日々でしたが、ある日人間たちが、何かを抱えてラッキーの元を訪れました。ラッコの赤んぼうです!
何もできない赤ちゃんラッコをみたラッキーは?
やせっぽちで、ひっきりなしにキーキーミーミーとなく赤ちゃんラッコ。はじめは、「わたしに、この ちっちゃいのを どうしろっていうの?」と困惑していたラッキーですが、小さいころの自分のように何もできない赤ちゃんラッコをみて、泳ぐ楽しさをおしえてあげたいと考えはじめます。

おちびさん、これから
カニの たべかたや
毛づくろいの しかたや
おなかを テーブルにすることを
おしえてあげる。
(中略)
だけどね おちびさん、
いちばん たいせつなのは あそぶこと。
こうしてラッキーは、新しい役割をつとめることになったのです。
アメリカのモントレーベイ水族館のラッコたちがモデル
このラッキーのお話には、モデルになったラッコたちがいます。赤ちゃんラッコの保護プログラムを行っている、アメリカ・カリフォルニア州にある、モントレーベイ水族館のラッコたちです。そのうちの1頭、ジョイは、野生に帰れないと判断されてから、実に16頭もの赤ちゃんラッコを育てたといいます。
遊ぶことが大好き、素直でパワフルなラッキーの心の動きを丁寧に描く、感動と元気をもらえる物語です。海や水族館のラッコたちに思いをはせながら、読んでみてください。