ゴムや紙、本、チョコレートにパン……。これらはどれも、わたしたちの暮らしに溶け込んだ、身近な存在です。ではこれらは一体、何を原料に、どうやって作られているのでしょう? 絵本の形でそれを教えてくれるのが、『どうやって作るの? パンから電気まで』(オールドレン・ワトソン 作/竹下文子 訳)です。
原料から完成まで、絵で解説!
この本では、19のものについて、その作り方を紹介しています。
ゴム、紙、本、石炭、電気、ガラス、スチール、せっけん、プラスチック、ペンキ、もめん(コットン)、洋服、羊毛(ウール)、くだもの・やさい、はちみつ、さとう、チョコレート、塩、パン
実にさまざまな種類があり、一見バラバラに思えますが、ページをめくっていくと、それぞれのものに共通点があることがわかってきます。
最初のふたつ、「ゴム」と「紙」を見てみましょう。
ゴムは、「ゴムの木」の汁からできています。ゴムの木の皮から染みてくる液体をあつめ、乾かすと、「天然ゴム」のできあがり。プレス機で伸ばしたあとは工場にいろんな型に入れられて、タイヤや、ボール、。
次にでてくる「紙」。ゴムとはまったく違うものですが……、元は同じ「木」。
細かくした木に化学薬品を混ぜてできるのが、この絵のどろどろした「パルプ」。この後たくさんのローラーでうすく伸ばされ、紙になります。
完成したものは似ていても、原料や作り方が違うものもあります。(たとえば「スチール」と「プラスチック」は、鉄と石油という違うですが、どちらの材料でも、スプーンやフォークができます!)
身近なものを原料からみることで、さまざまな発見があります。
1974年の翻訳絵本。レトロな作り方だけれど、基本は同じ
オールドレン・ワトソンさんによるこの絵本の原書は、アメリカで1974年に出版されました。そのため、昔の作り方で紹介されているものもあります。また、「石炭」など、現代の生活では身近でないものも登場します。
けれども私たちの身の回りにあるものが、たくさんの手や機械をつかって作られているもの、という。訳者の竹下文子さんは、本の最後でこのように述べています。
(前略)毎日食べるパンから、毎日使う電気まで、身のまわりのいろいろなものが、何から、どうやって作られるか、という基本は、ほとんどかわっていません。
大むかしから、人間は、生活に便利なものを発明したり、作りかたを工夫したりしてきました。どうしたらできるか、もっといい方法はないか……世界じゅうの人たちが、いっしょうけんめい考えてきました。いまでも考えています。100年後の人たちも、やっぱり考えているでしょう。(中略)
「はてな?」と考え、「そうか!」とわかる。これは、子どもにも、おとなにも、とてもだいじな、そして楽しいことだと、わたしは思っています。
また、この絵本を推薦され、多くの科学絵本も手がけている絵本作家のかこさとしさんは、こんなコメントをされています。
この絵本がすぐれていると感じたのは、子どもたちが理解できる範囲の中で、ひとつひとつの物質が変化していくようすを描いたところであり、子どもたちの興味と満足が、科学性をそこなうことなく獲得できることを、わたしは敬服の念をもって見たものです。
これは、どうやってできたのかな? どうしてこの形なのかな? ふだん何気なく目にしているもののことを、あらためて気にして考えてみると、おもしろいことがたくさんあります。この本は、そんな好奇心を育む手助けにもなるかもしれません。
せっせとはたらく動物たちのすがたもゆかいな一冊です。絵もじっくり眺めながら、楽しんでくださいね。