『いろいろたべもの』は、シルエットをみて、何の食べものかをあてるクイズ絵本。登場するのは全部で75種類の食べもの。リアルでうつくしいイラストにほれぼれとする1冊です。本作の著者、内田有美さんにお話を伺いました。
「こどものとも」からすぐにハードカバー化された『おせち』(福音館書店)が大好評でしたね! まるでスーパーのお正月料理コーナーのように、書店でも年末年始の定番になりそうです。
幅広い年齢のかたに手にとっていただけて、嬉しいです。どうもありがとうございます。
今回の『いろいろたべもの』は、小さなお子さんから楽しめるクイズ絵本ですが、この絵本の企画はどのように始まったのでしょうか?
2017年に白い食べものばかりを描いた「shiro」シリーズ、2019年に食後の痕跡を描いた「after meals」シリーズを制作して、個展をひらきました。
2つのテーマのどちらかで絵本を展開できたらと思っていたんですが、「白い食べものばかりだと色味に変化がなく、絵本としては見栄えがしないだろう……」とか、「食後の食べカスより食べる前のおいしそうな絵のほうが見応えがあるのでは……」など、いろいろな問題点にぶつかり、なかなか企画が通りませんでした。

shiroシリーズより

after meals より、“takoyaki”
3年近い月日をラフに費やし、いつになったら絵本が作れるんだろうと途方に暮れていたところ、「白一色が寂しいなら、色とりどりのカラフルな食べもの絵本にしましょう!」「色で分けるだけじゃなくシルエットクイズも入れて、子どもが楽しめるような遊びの要素を盛り込んでみましょう!」と担当編集者さんからご提案いただきました。
自分の絵をシルエットで使うのは初めての試みでしたが、楽しい絵本になりそうな予感がしました。そこから一気に進んでいった感じです。
「いろいろたべもの」というだけあって、果物、野菜から、加工食品や乾物、海産物、お菓子まで! なかなかの難問もあり、内田さんの遊び心が感じられました。食べものの選定のエピソードがあればぜひ教えてください。
食べもののラインナップは「これ、な~んだ?」と子どもにクイズを出している場面を想像して選びました。簡単にわかるものは「あたり。すご~い!」と盛りあがり(頭の中で)、難しいものは、シルエットページとイラストページを交互に見て確認している子どもの姿が思い浮かびました。
子どもたちはきっとすぐに覚えてくれるだろうから、ぱっと見ですぐ分かるものだけでなく、子どもが知ってるかなぁ? という難易度高めの食べものも選んでみました。絵本で覚えた食べものを、スーパーや食卓で見つけてくれたら嬉しいです。
採用されなかったモチーフを含めると、この本のために全部で96点もの食べものの絵を描かれたそうですね。描きながら、なにかあらたな発見はありましたか?
個展や過去に仕事で描いた食べものが、この絵本にもたくさん登場します。同じモチーフをふたたび描くことに対する気持ちやモチベーションが少し心配でしたが、じっさい描いてみると、色や形が同じものはひとつもないので、どれも新鮮な気持ちで制作することができました。
一番気に入っているイラストはありますか? また、一番苦労したイラストは?
気に入っているイラストは、だれも分からないだろうなぁ~と思いながら描いたキクラゲ。難しかったイラストは、パイナップルです。
絵のこだわりポイントはどこでしょう?
自然な見え方を意識しています。過剰な演出は極力せず、そのものが持つ色や質感を丁寧に表現することを心がけています。
これから、どのような絵本を描いていきたいですか?
子どもも大人も楽しめる絵本。そして、あらためて考えてみることもないような、当たり前に身近にあるものや、なにげないことを、いつもと少し違う視点で見るきっかけとなるような題材の絵本を作っていきたいです。
次回作も楽しみにしています! ありがとうございました。