生まれてくる赤ちゃんへのプレゼントに「絵本」を選ぶというのは、とてもすてきだと思います。
生まれたての赤ちゃんは、目はほとんど見えていなくて、なにもできないように見えますが、全身でまわりのことを感じていると思います。そのようすは、まるで、生まれてすぐから、一瞬一瞬、音を立てて大きくなっていくかのよう。
生まれてくる赤ちゃんに絵本をプレゼントすることは、赤ちゃんが全身でなにかを感じて、まわりに関心を示し、好奇心豊かに成長していく、そんな成長のお手伝いができるアイテムを紹介する恰好のチャンスだと思います。
プレゼントするときは、絵本をお父さんとお母さんに読んであげるのがおすすめ。
赤ちゃんが目にするのに、どんな色の本がいいでしょう? 赤ちゃんには、赤色や青色など、原色がいいという話もありますが、優しい色の本だってすてきです。本の大きさも、大きくても小さくてもOK。大事なのは、プレゼントしたいという想いです。
赤ちゃんの目が少しずつ見えるようになってくると、お父さんやお母さん、まわりの人の優しいまなざしがあるのがなにより安心。だから、赤ちゃんが好きな「顔」がでてくる絵本もいいですね。
それから、赤ちゃんに聞こえている音はどんな音かなと考えてみます。きっと、いつも一緒にいる人が語ってくれる声やあやしてくれる声が、赤ちゃんにとって一番好きな音なんだろうと思います。
でも、お父さんやお母さんやまわりの人がいつも優しい声で語れるかというと、そうでないときもあるかもしれません。赤ちゃんがずっと泣いてイライラしたり、疲れてしまったりすることもきっとあります。そんなときに、「絵本を読んであげたらいいよ」と伝えるのもいいかも。オノマトペの絵本はリズムが心地よくて、おとなも赤ちゃんも喜んでくれるはずです。
「どんな絵本が好きかなあ」「どんな絵本を、赤ちゃんは喜んでくれるかなあ」と考える時間もふくめて、とてもすてきなプレゼントになると思います。
そして、できたらプレゼントを渡すときに、お父さんやお母さんにプレゼントの絵本を読んであげてみてください。おとなになると、なかなか絵本を読んでもらう機会はありません。でも、だれかに本を読んでもらう心地良さを知る機会を一緒にプレゼントできたら、その良さが赤ちゃんにも伝わって、最高のプレゼントになるはずです!
赤ちゃんへのプレゼントに紹介したい絵本。
『だっだぁー』(ナムーラミチヨ ・著、主婦の友社)
ねんどで作られたおかしな顔とオノマトペの言葉でつづられた絵本。何度も赤ちゃんに読んできたのですが、なぜか喜ぶのです。笑ってくれるとうれしくて、どんどん調子にのって読んでしまいます。この本を読んでいるときのわたしを他の人が見ていたら、笑ってしまうかもしれません。赤ちゃんが笑っている顔を見たいときは、ぜひ!
『おめんです』『おめんです2』『おめんです3』(いしかわこうじ・作、偕成社)
動物たちがおめんをかぶっているしかけ絵本。しかけになっているおめんをとると、にっこり笑う顔を見ることができます。『おめんです3』は、なまはげやえびすさん、忍者や能面など、おめんの表情が怖かったり、ふしぎだったりするので、めくったときの変化をより楽しめます。なにより、「ばあ!」と顔がでてくるだけでなく、その動物の特徴がちゃんと絵や文章で描かれているのがすてきです。
『ノンタンいないいなーい』(キヨノサチコ・作 絵、偕成社)
「赤ちゃん版ノンタン」は、全部で9冊。どの本も生まれたての赤ちゃんにおすすめだけれど、3冊選んでみました。
赤ちゃんを目にすると、笑わせたくて思わずやってしまう「いないいないばあー」遊び。この遊びを、ノンタンやノンタンの友だちたちと一緒にできる絵本です。「いないいなーい」と言って、顔をかくすものが、ぼうしだったり、絵本だったりするところもおもしろい。ノンタンシリーズが赤ちゃんにも人気があるのは、色がはっきりしていて、線も黒くて太く、認識しやすいからだと思います。
『ノンタンもぐもぐもぐ』(キヨノサチコ・作 絵、偕成社)
赤ちゃんの日常は食べることと寝ること。「なにたべてるの?」と問いかけてからページをめくるのが、赤ちゃんはもちろん、少し大きくなった子どもでもうれしい。何度も読んで、期待通りのものがでてくると声をあげて笑う。「いないいないばあ」と同じおもしろさがあるのかも。食べているのが全部くだものというところも、小さい子でも楽しめるところなのかもしれません! 最後にお水で口をゆすぐというのも、小さい子だから。ノンタンのようにぶくぶくできなくても、かわりにお水だけ飲むという習慣づけも大事ですね。
『ノンタンはっくしょん!』(キヨノサチコ・作 絵、偕成社)
赤ちゃんが病気になったときに、お医者さんにつれていくことになるでしょう。そんなとき、病院でなにが起こるのかわからない赤ちゃんも、この本を先に見ていたら、「ノンタンといっしょだ」と思ってくれるかも。聴診器をあてるのをおもしろがるところが、ノンタンらしい。お薬もちゃんと飲んで、元気になる。子どもが熱を出すのはあたりまえのことですが、すごく心配になってしまう新米お母さんも安心できる1冊だと思います。
『たいせつなあなたへ』 (サンドラ・ポワロ=シェリフ・作 絵、おーなり由子・訳、講談社)
赤ちゃんが生まれるまでのお母さんの気持ちが描かれている絵本です。どの子も、親やまわりのおとなたちに待ち望まれ、楽しみにする思いとともに生まれてきたはず。まだ目も見えない赤ちゃんの命を愛おしく思える、絵もとてもすてきな1冊です。
『じどうしゃくるるん』(まついのりこ・作 絵、偕成社)
ヘリコプターのようなプロペラのついた自動車があちこちにでかける。空を飛んでかめの上に落ちたり、魚に食べられそうになったり、おばけに会ったり……。「これを赤ちゃんのプレゼントに」と思うのは、自動車の窓に写真を貼ったり、似顔絵を描いたりできるところ! 本に子どもの名前を書くこともできます。その子だけの1冊になるといいですね。
安井素子(保育士)
愛知県に生まれる。1980年より公立保育園の保育士として勤める。保育士歴は、40年以上。1997年から4年間、月刊誌「クーヨン」(クレヨンハウス)に、子どもたちとの日々をつづる。保育園長・児童センター館長を経て、現在は中部大学で非常勤講師として保育と絵本についての授業を担当。保育者向け講演会の講師や保育アドバイザーとしても活動している。書籍に『子どもが教えてくれました ほんとうの本のおもしろさ』(偕成社)、『0.1.2歳児 毎日できるふだんあそび100ーあそびに夢中になる子どもと出会おう』(共著、学研プラス)がある。月刊誌「あそびと環境0・1・2歳」(学研)、ウェブサイト「保育士さんの絵本ノート」(パルシステム)、季刊誌「音のゆうびん」(カワイ音楽教室)で連載中。