『ペンギンのトビオ』(斉藤 倫、うきまる 作/嶽まいこ 絵)は、ペンギンの子どもの「トビオ」が、はじめての飛行機に乗ってひとり旅にでかける物語。挿絵もいっぱいで、ちいさなユーモアにくすりとしながら、トビオと一緒に旅をする気分をあじわえる幼年童話です。

「こわいなあ。でも、ぼくは、いくんだ。」
主人公はペンギンの子どもの、トビオ。2年前、とつぜん届いた、北極にすむシロクマのポーラさんからの「なんきょくのペンギンさま」宛の手紙にお返事をしたトビオは、幾度ものたのしいやりとりの末、この日、ついに飛行機に乗って文通相手のシロクマに会いに行くことになったのです。
背中を押したいような、心配なような、複雑な気持ちのお父さん。そして、「しんせつに してくれたひとに、おれいであげるのよ」とスーツケースを魚でいっぱいにしてしまったお母さんに見送られ、トビオは空港へ出発します。

お母さんは、トビオにこんな声をかけます。
「トビオは、こわがりなんだから、こまったら、
みんなに、しんせつに してもらいなさい」
トビオと、いっしょにどきどきの旅へ
こうして、南極を出発したトビオ。広い広い空港に到着し、さまざまなひとたちに色々なことを教えてもらいながら、うごく歩道を歩き、荷物を預け……と、飛行機に乗りこむまで、そして、機内でのできごとが、そこかしこにちりばめられたユーモアとともに、丁寧に描かれていきます。
嶽まいこさんの絶妙な挿絵も手伝って、飛行機に乗ったことがないお子さんは、トビオといっしょにおどろき、乗ったことがあるお子さんはそのときのことを思い出しながら……まるで読者もトビオの横にいるかのような気分が味わえます。

また、なんといっても、登場するどうぶつたちのおしゃべりなこと! 「こまったら、みんなにしんせつにしてもらう」というお母さんの言葉をすなおに実行するトビオの清々しさも大いに手伝って、終始トビオのまわりは和やかでにぎやかです。
とつぜん誰かに話しかけることは勇気のいることですが(トビオ、すごい!)、旅だからこそ、通りすがりの人とのちょっとした会話やつながりが、特別な思い出になることもありますよね。
最後にはとびきりのサプライズも! 旅のたのしみがぎゅぎゅっとつまった1冊です。ぜひ読んでみてくださいね。


