『やまがみさまのきょだいべんとう』(大串ゆうじ 作)は、20年に一度開かれる奇妙なお祭りを描いたお話です。おいしそうな食べものや楽しげなメカなど、細部まで描き込まれたイラストと、リアリティのある綿密な設定が魅力の一作です。
待ちに待った、20年に一度のお祭り!
「ぼく」の住む村では、村人総出で超巨大なお弁当を作るという、風変わりなお祭りが20年に一度だけひらかれます。その名も、「やまがみさま だいまんぷくまつり」! 山の向こうからやってくる“やまがみさま”という巨人の神様をもてなすお祭りです。
今年は、「ぼく」が待ちに待った、20年に一度のお祭りの年。この一大イベントを少しだけのぞいてみましょう。
まずは材料の準備から。卵500個を使った巨大卵焼き、キリンの首にぴったりのメガちくわ、14人がかりで運ぶマンモスの肉など、材料をそろえるだけでも一苦労です。お米にいたっては、子どもが一粒持つのがやっとの大きなサイズ。それを子どもたちが一粒ずつ抱えて運びます。
そんな大きな材料を調理するには、もちろん巨大な調理器具も必要。揚げ物担当の「フライングロボ3ごう」や、ビッグ炊飯器で炊き上げたご飯をかき混ぜる「シャモジカー88」など、かっこいいメカたちもフル稼働して、なんとか着々とお弁当が仕上がっていきます。
子どもも大人も力を合わせ、ついにお弁当が完成したそのとき……「どすーん、どすーん」と大きな地響きが響きわたります。
「あっ!!」
村人たちが驚いて見上げた先に現れた、やまがみさまの姿とは……?
そして、この「やまがみさま だいまんぷくまつり」が長く大切にされている理由が、物語の最後で明かされます。
すみずみまで見たい、細かく描き込まれた絵!
本作の見どころは、なんといっても、おいしそうに描かれた巨大なお弁当。卵焼き、焼き鮭、エビフライ、そしてごま塩がふられた炊き立ての白米。なんとも食欲をそそる仕上がりです。
作者の大串ゆうじさんは、『しょうてんがいくん』『むげんことわざものがたり』などで知られ、昭和レトロな作風と、緻密に描き込まれたイラストで人気の絵本作家。見返しには一風変わった登場人物紹介もあり、探し絵の絵本としても繰り返し楽しめる一冊です。