『紙ひこうき、きみへ』は、2匹のリスの出会いとわかれ、そしてお互いを想い合う気持ちをていねいに描いた物語。野中柊さんの童話に、木内達朗さんの美しい絵を合わせて、全ページオールカラーでお届けする、心あたたまる1冊です。
シマリスのキリリのもとに届いた紙ひこうき
「今日はきっとなにかある。とくべつなこと!」朝、目がさめてそう思ったシマリスのキリリのもとに、とつぜん、空から青い紙ひこうきがとんできました。
「こんにちは。夕方には、そちらにつきます」
いったいだれから? それはわかりませんが、とにかく、キリリのもとにお客さんがくるようです。キリリはむねをどきどきさせながら、夕ごはんに木の実の粉をつかったパンやビスケットを焼いたりして、おもてなしの準備をはじめました。そうして––––
「きみだね?」
やってきたのは、ずっと旅をつづけているという、ミケリスのミーク。その日から、2匹はまるで、ずっとなかよしだったみたいに、長い時間を一緒に過ごしました。
けれども、ある日、とうとうミークが旅立つ日がやってきます。
わすれるのは、たいせつなこと……?
必要なものだけをリュックにいれ、心も身体も身軽な旅を心がけているミークは、キリリにこんな言葉をのこしていました。
「なんでも、おぼえているわけにはいかない。よくばって、荷物を入れすぎたかばんみたいに、心が重くなっちゃうだろう? 心が重たくなると、からだも思うように動かなくなるからね。忘れるのは、たいせつなことだよ。」
でも、キリリはこの言葉になぜか、かなしくなってしまったのでした。
ミークはキリリのことを忘れてしまうのでしょうか?
実は、キリリとの出会いは、ミークにも小さな変化をもたらしていました。別れる前にとばした最後の紙ひこうきに、こんな言葉を書いていたのです––––「また会おう、きっとだよ」。
物語の後半は、そんなふたりがそれぞれのやり方で相手のことを想うすがたが描かれます。
手軽に連絡をとる手段がある私たちですが、こんなかたちで、うれしいことも、悲しいことも、小さいことも大きいことも、伝えられたらどんなに素敵だろうなあ、と思います。大切なだれかへの贈り物にもおすすめしたい1冊。ぜひ読んでみてくださいね。