12月になりました。子どもたちがサンタさんからのプレゼントに胸躍らせるころかもしれませんね。そんなとき、子どもたちがよく抱く疑問。それが、きょうご紹介する本のタイトルのもとになった、「サンタクロースって本当にいるの?」というものです。
今から120年ほど前、ニューヨーク・サン新聞社にこの質問をした女の子がいました。そして、新聞社が社説の欄で寄せた、とても素敵な回答をまとめたのが、『サンタクロースっているんでしょうか?』(ニューヨーク・サン新聞 社説/中村妙子 訳/東逸子 絵)です。
8歳の女の子、バージニア=オハンロンが送った質問
1897年秋、ニューヨーク・サン新聞の社説欄は、このように始まりました。
ニューヨーク・サンしんぶんしゃに、このたび、つぎのようなお手紙がとどきました。さっそく、社説でとりあげて、おへんじしたいとおもいます。
この手紙のさしだし人が、こんなにたいせつなしつもんをするほど、わたしたちを信頼してくださったことを、記者いちどう、たいへんうれしくおもっております。
「たいせつなしつもん」とは、8歳のバージニアが送った「サンタクロースって、ほんとうに、いるんでしょうか?」という質問のことです。この前書きとバージニアの手紙の紹介のあと、この質問への丁寧な答えが書かれています。
サンタクロースを見た人がいなくても、それがサンタクロースはいないという証明にはならない
この本は、まるまる一冊、ほぼ社説の和訳だけでできています。それくらいボリュームのある回答の中には、大人の心にもじんとくる、素敵な考え方があふれています。
広くて深いこの世界をおしはかるためには、すべてを知ることのできるような、大きく深い知恵が必要だということ。
サンタクロースを見た人がいないからといって、それがサンタクロースはいないという証明にはならないこと。
この世界で一番たしかなことは、子どもの目にも、大人の目にも、見えないものだということ。
ものの見方、考え方という大きな視点から、バージニアに対して、愛情のこもった回答を寄せた社説は、今でも世界中で愛読されています。偕成社でも1977年に出版して以来、クリスマスシーズンの定番の本となっています。
バージニアのことを紹介した『サンタの友だちバージニア』
『サンタクロースっているんでしょうか?』がたくさんの人に読まれ、読者の方々からは、バージニアについて知りたいという声があがりました。その声をもとにして、バージニアがどんな女の子だったのか、社説の回答をもらって以降どんな人生を過ごしたのかをまとめたのが、『サンタの友だちバージニア』(村上ゆみ子 著/東逸子 絵)です。巻末にはニューヨーク・サン新聞の社説原文も掲載され、より詳しくバージニアやサン新聞のことがわかります。
どちらも、読むと心がほっとあたたまり、だれかに話したくなるかもしれません。贈りものにもおすすめです!