年月とともに成長しながら変化をみせてくれる草花や木。今年はどんな花が咲くかな? と期待したり、いつの間にか伸びた背丈に時の流れを感じたり。人間より長生きをする木には、たくさんの時間が刻まれています。きょうは、ある庭師と時を超えた贈りものの出会いを描いた絵本『ほんのにわ』(みやざきひろかず 作)をご紹介します。
父親の背中を追う、ひとりの庭師
あるひとりの庭師。同じ仕事をしていた亡き父親の背中を追いながら、日々、庭の手入れをしたり、新しい庭をつくったりしています。この仕事をしていると、「とうさんのしるし」がみつかることがあります。
たとえば、ずっと通っているお庭の持ち主のこんな一言。
「あなたの おとうさまが うえてくださった はな、ことしも さきましたよ」
「ほんのにわ」に行ってみたい!
ある晩、庭師がお父さんがのこした庭の本を読んでいると、不思議な庭のページをみつけました。それは、「ほんのにわ」。しかも、その本にはお父さんが「ほんのにわ」で撮った写真まで挟まっていたのです。
「ほんのにわ」っていったい どこに あるのだろう?
心をうばわれたその庭について、いろいろ調べてみても、一向に分かりません。
こうして、「ほんのにわ」にお父さんと同じように入りこんだ庭師。見たことのない草や花ばかりのその庭は、けれども、どこかとてもなつかしい気がしてなりません。
著者からのメッセージ
最後に、著者のみやざきひろかずさんがこの絵本にこめた思いをご紹介します。
庭はぼくにとってなんだか不思議な空間。ただ草や木が生えて花が咲くだけの場所ではないように見えます。なんとなく庭はどこか別の世界とつながっていて、植物たちはその別の世界からやってくるエネルギーで生かされているのではないだろうかって……。とくに初夏の庭はエネルギーがいっぱいでぼんやりしているとその渦にのみこまれてどこかにつれて行かれそうです。この絵本のおじさんみたいに。
同じ仕事を持つお父さんと息子のあいだの愛情を感じる絵本です。ぜひ本を読んでみてくださいね。