日本やカナダなどでいろいろなナメクジを見たり、飼育したりしてきましたが、やっぱりいちばんかわいいと思うのは、ずばり「チャコウラナメクジ」です。チャコウラのなかでもとくにふ化してから1か月くらいたったころがいちばんかわいいです。
ふ化したてのチャコウラもコロコロしたかたちをしていて、これはこれでとてもかわいいのですが、あまりに若いチャコウラは体が小さすぎて、飼育容器をいれかえるときなど傷をつけないようにそっとすくって、そっとあたらしい容器において、とすごく神経をつかいます。そんなに気をつかって毎日お世話をしていても、ある日、飼育容器のなかの子ナメクジが全部死んでしまうこともあったりして、元気に育つかどうか自体が心配なのです。
その点、うまれて1か月くらいたつと、皮ふがしっかりし、薬さじですくいやすく、世話も楽になります。また、急にたくさんのチャコウラが一気に死んでしまうこともへるので、すこし気楽になり、かわいさを堪能できます。1か月チャコウラがかわいいところは世話のしやすさだけではありません。大きさ1センチくらいで、ほっそりとしていて、MAXのサイズまでにそだったチャコウラにはないミニチュア感があるのです。そこがとても気に入っています。
チャコウラの子ナメクジ
どの種類のナメクジでも、ふ化したばかりの子ナメクジは、ほとんど柄もなくすきとおった体の色をしています。子チャコウラは、うすいピンク色で成長するうちにしっかりした茶色になっていきます。なんと、若いチャコウラは茶色くなっても透明感があります。明るいところでみると、からだの後ろの方は内臓がなく、すきとおっているのがよくわかります。見た目はすっかりチャコウラナメクジなのに、よくみると触角の先の方やしっぽの先はきらきらすきとおっていて、とてもきれいなんです。
実験室だけでなく、野外にいるチャコウラでもこのようなとくべつにかわいい時期があります。5月か6月の雨あがり。若くてつやつや、まだ小さいチャコウラナメクジをさがしてみてください。
文/宇高寛子