暮れ。二つ玉低気圧とやらが、たて続けにやってきて、久しぶりに吹雪で車が立ち往生。久しく忘れていた40年程前の年末を思い出した。身動きできなくなった100台を越す車と一緒に一夜を明かした。不安というより大勢でワイワイやりながら楽しんだような気がする。
今年も同じでこの忙しいときに……とブツブツ言おうとしたが目の前の遊水池のハクチョウたちの群れは、なんだか楽しそうに見える。
年が明けるとお天道様はその代わりと考えたかどうか知らないが、おだやかな新年が続く。客が多いというので裏庭に車を置いたら、ある日「今年の客は早いですネ」とカミさんが言った。止めた車の下からエゾクロテンがのぞいている。おやおやと言いながら足跡をたどると近くに積んだ薪の中に穴が見えた。のぞくと目があった。「今年もよろしく」といったら、奥へ消えた。
裏のハギの茂みに数日前から客が立ち寄る。今年もミヤマホホジロ、オオマシコである。ある朝気づくとハギの実がひと粒も残っていなかった。これも例年の行事になっている。茂みがすっきりして新しい年を迎えていた。大陸から寒気団が南下して、また気温がぐんぐん低くなった。
そんな日、サケ、マス増殖センターの大木さんから電話。いつもサケの産卵をのぞかせてくれる人だ。「川底が賑やかになってます」というので、出かけることにした。秋の日々、数々のドラマの舞台がひっそりと冬の支配下にたたずむ。だが底をのぞくと、大木さんの言そのもの。石をそっとうごかすと、ゆらゆらと大きな卵黄をかかえて、稚魚が舞い上がった。目をこらすとあちこちの石のかげに赤い卵黄がある。
初めまして、と尾をふって挨拶している。川底はもう春であった。そう、自然はもう春のきたことを告げているのである。