11月。小春の日が続いたと思っていたら雪。そして木枯らしが吹き、ある日ぽかーんと、また春が顔をだす。そのたびに大地は残った緑の気配を微風に流し、一面を真っ白に化粧、そしてまた枯れ野の風情を押しつける。下着を一枚増やし、次の朝は減らしたりと、私は変化に追いつけないでいる。忙しい。
裏山の小道を歩いていたら、倒木の陰でユキウサギの姿を見つけた。あたりは枯れ野。本人は隠れているつもりらしいが、体は「私はここにいます」と主張している。落ち葉に染まった大地の中に真っ白になった体表が困っていた。換毛が早すぎたのではない。根雪になるのが遅すぎたというべきであろう。本来この動物にとって、体毛の晩秋の白化は保護色となり、自然が与えたプレゼントだと考えられているが、これでは逆である。枯れ野に白色では様にならない。かわいそうだ。
何年か前、倒木の上でイイズナイタチと遊んだことがある。その年も根雪になるのが遅く、待てません、とばかりにさっさと冬の衣装に衣替えしたこの小さな生きものが、私に見つかってしまった。いくら小さくても目立ってしまったのである。
自然はそこに住む生きものにとってやさしい、という人がいるが、そうとは限らないと、私はそのときもつぶやいていた。でも私は楽しんだのだから、やはりやさしいといっていいのかもしれない。
下旬、今秋もオコジョがやってきて2日間遊んでいった。一面の雪の中で遊ぶオコジョの尾の先の黒が、楽しい気持ちを充分に表現していた。ピアノ線の先につけた黒いリボンにも似て、ピコピコ、ヒョーン、ピコピコヒョーンと舞っていた。あたりにとけ込んだ保護色の体を代表して,黒いシッポが物語をいつまでも続けていた。