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北の森の診療所だより

第24回(最終回)

6月 「ゆくゆくは仙人」を望む日々

2018.06.20

今年もエゾゼミの中にいる。これも例年のように、ここ2、3日前からカラスの声が参加した。セミたちの受難の季節の到来も変わりがない。
ベランダから、不真面目にもビールを飲みながらのぞきたいと、目の前のカラマツの大木につけた巣箱で、今年も5匹のキタリスの子が育った。広いうら山に行くには、庭とベランダを通らなければ行けない。天気が穏やかだと、コーヒーなんぞを外で飲むくせがあって、いやでも私と顔合わせをする。今朝も少し不機嫌にクックッと声をたてながら、森へ出かけていった。これもいつもと変わらない。


入院(?)患者は変わらず隻眼(片目)のアカゲラ、脳に少々の問題をかかえたオオアカゲラ、それに下手(ヤブ)な獣医師の所に運び込まれたために完治せずに居候となったチゴハヤブサが家中を荒らし汚している。

隻眼のアカゲラ、ゲラッピーは、もう20年を超えそうで終日横になっている。そのくせ、近くを通る人の足音を聞き分けて、カミさんだと、餌のミルワームをよこせと請求して騒ぐ。私の足音だと、危ないといった仕草でベッドの下にもぐり込む。
野生のアカゲラの4倍も生きて痴呆が始まってもう何年にもなるのに、本来の知性がどんどん消えて、代わりに人間にぐんぐん近づいて私たち夫婦を困らせている。

チゴハヤブサは、その本来の能力を発揮して、与えるものが気に入らなかったり、鮮度が少しおちたりすると見向きもせずに、代わりに腹が減ったと鋭い声でがなりたてる、わがままな患者となりつつある。


森の中の散歩道に置く椅子の数が、また少し増えている。それでもそこに座ると生きものたちが「きた、きた」と遊んでいく。毎年その数も増えているような気がする。
老人になり、私の体から人の気配が少しずつ消えているのかもしれない。仙人みたいになれるかもしれないと、これはこれで年をとるのが楽しみでもある。

今回で終わりです。2年間のおつきあい、ありがとうございました。

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profile

  • 竹田津 実

    1937年大分県生まれ。岐阜大学農学部獣医学科卒業。北海道東部の小清水町農業共済組合・家畜診療所に勤務、1972年より傷ついた野生動物の保護・治療・リハビリ作業を始める。1991年退職。1966年以来、キタキツネの生態調査を続け、多数の関連著作がある。2004年より上川郡東川町在住。獣医として、野生動物と関わり続けている。

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2024.11.21

関ヶ原の戦いに興味をもった息子が図書館で借りてきたら、他の戦いや戦争などにも関心を持ち、常に借りてくるので購入しました。小1にもわかりやすいです。(7歳・お母さまより)

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