今年もエゾゼミの中にいる。これも例年のように、ここ2、3日前からカラスの声が参加した。セミたちの受難の季節の到来も変わりがない。
ベランダから、不真面目にもビールを飲みながらのぞきたいと、目の前のカラマツの大木につけた巣箱で、今年も5匹のキタリスの子が育った。広いうら山に行くには、庭とベランダを通らなければ行けない。天気が穏やかだと、コーヒーなんぞを外で飲むくせがあって、いやでも私と顔合わせをする。今朝も少し不機嫌にクックッと声をたてながら、森へ出かけていった。これもいつもと変わらない。
入院(?)患者は変わらず隻眼(片目)のアカゲラ、脳に少々の問題をかかえたオオアカゲラ、それに下手(ヤブ)な獣医師の所に運び込まれたために完治せずに居候となったチゴハヤブサが家中を荒らし汚している。
隻眼のアカゲラ、ゲラッピーは、もう20年を超えそうで終日横になっている。そのくせ、近くを通る人の足音を聞き分けて、カミさんだと、餌のミルワームをよこせと請求して騒ぐ。私の足音だと、危ないといった仕草でベッドの下にもぐり込む。
野生のアカゲラの4倍も生きて痴呆が始まってもう何年にもなるのに、本来の知性がどんどん消えて、代わりに人間にぐんぐん近づいて私たち夫婦を困らせている。
チゴハヤブサは、その本来の能力を発揮して、与えるものが気に入らなかったり、鮮度が少しおちたりすると見向きもせずに、代わりに腹が減ったと鋭い声でがなりたてる、わがままな患者となりつつある。
森の中の散歩道に置く椅子の数が、また少し増えている。それでもそこに座ると生きものたちが「きた、きた」と遊んでいく。毎年その数も増えているような気がする。
老人になり、私の体から人の気配が少しずつ消えているのかもしれない。仙人みたいになれるかもしれないと、これはこれで年をとるのが楽しみでもある。
今回で終わりです。2年間のおつきあい、ありがとうございました。