学校が終わると、ロミはいつものように、途中までミューちゃんといっしょに帰った。そして小さなマンションの前にあるYの字型の分かれ道で、右と左に分かれる。またすぐ会うのに、何回も手を振りあったり、チラチラ振りかえったりして。
(ごめんね、ミューちゃん)
ミューちゃんの背中が小さくなっていくのを見ていると、また胸がチクチクした。
(あのことをいったら、怒るかな)
いや、たぶんミューちゃんは怒らない。
同じ歳のくせにミューちゃんは、自分なんかよりも大人っぽいから、「それがロミのためになるんなら、しょうがないよね」と笑っていってくれるにちがいない。でも心の中では、きっとガッカリするだろう。
そう思うと、荷物がいっぱい入ったリュックを背負わされたような気持ちになる。
そのリュックに入っているのがお菓子やお弁当なら、少しくらい重くても、楽しい気持ちになるのだろうけど––––リュックの中身は、残念ながら塾のテキスト。
じつは5月のゴールデンウィーク明けから、塾に行く日が週3日に増えるのだ。受験用の勉強だから時間も長くなるし、いままでみたいに放課後に遊ぶのがむずかしくなる。
おまけに休みの日に、特別授業やテストを受けたりすることが多いらしいから、土曜の午後にやっているミニバスケットボールの練習に出られないときもあるだろう。もちろん試合も休みの日に行われることがほとんどだから、出場するのはきびしい。
そんな状態のままで続けていると、一生懸命に取りくんでいる人たちに、いつか迷惑をかけてしまうことになるにちがいない。
だからパパとママと話しあって、ロミは5月いっぱいでミニバスケットボールを休むことにしたのだ。いまは4月の下旬だから、あと1か月とちょっと––––もちろんロミ自身もさびしいけど、両立するのがむずかしいなら、そうするほかにない。
でも、そのことを、まだ監督さんとコーチ以外のだれにもいっていなかった。
(あぁ、早くミューちゃんにいわなくっちゃ)
最近のロミの最大の悩みは、このことだった。
今度の地区大会では、絶対に上位に入賞しようと約束したのに――自分の都合でチームからぬけるのだと思うと、どうしたって心は重くなる。
(よし……絶対にきょう、話そう)
ロミは決心した。
いままで何度も話そうとしたけれど、どうしても心がくじけてしまってダメだった。きょうはなにがなんでも、話すんだ。