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絵本の相談室

保育士によるはじめての絵本えらび 第5回

本をおもちゃにしてしまいます。どうしたらいいですか?

答える人:保育士 安井素子

 子どもたちが本をおもちゃにしている場面っていろいろある。

 たとえば、0歳の子が本をかじってしまうとき。その本が、その子が大好きな本だとしたら、大きくなったときに「この本、大好きな本だったんだよ。大好きすぎて食べようとしてたよ」と、当時のことを伝えてあげることができたらすてき。

 でも、たまたまそこにある本をかじっているのだったら、さりげなく他のものにかえてあげてもいいかもしれないですね。

いちごが大好きな子にかじられてしまった絵本!(撮影:安井素子)

子どもがすることには、それなりに意味がある

 少し大きくなると、本を何冊かならべだすということがよくあります。

 これは、わたしの中ではありかなと思っています。デザインや色、大きさのちがい。本ってならべてみるとなかなかいい。子どもたちが、本をならべながら何に気づくのかを観察するのも楽しい。

絵本をじっと見つめる子ども。なにを感じてるのかな・・・・・・(撮影:安井素子)

 保育園で年少クラスの担任をしていたときに、子どもたちが絵本をならべるのをちょっと見ていたことがある(保育室に300冊くらい自分の本を置いていたので、たくさんありました!)。「これは、こっちじゃない?」「あー、ここのがいいね」って、根拠もなく言っているのをおもしろいなあと思って見ていた。
 あとから、子どもたちの絵の作品をかざるときに、保育者が一度床に絵を置いて貼る位置を決めていたのを、子どもたちが見ていたことに気づいた。大人がやっていたことをすぐに自分たちの生活に取りいれて再現する。子どもたちのやっていることには、それなりに意味があると思うのです。

「投げないで大事にしてほしい」と、短い言葉ではっきり伝える

 本を投げたりするのは、危険なのでこれはやめさせたい。

 「なんで、投げるの?! ダメ!」と頭ごなしにしかったり、反対に「これは、投げるものじゃないよ。大事なんだよ。もし、これがガラスにあたって割れたらどうする?」と言い聞かせて、理解させようとすることが多いと思う。

 ときにはどちらも必要なことがあるかもしれないけれど、「投げたらあぶないから、投げないで大事にしてほしい」ということを短い言葉で、はっきり伝えるのがいいような気がします。

 あとは、本を立ててトンネルの形にし、その中に車を走らせるという、「それはおもしろいね!」って場面に出会ったこともあります。そのときは、かわりに段ボールを持ってきて子どもたちといっしょにトンネルづくりをはじめた。

 子どもがやっていることを見て、おもちゃにしている本のかわりになるものがあれば手わたす。絵本で遊ぶなんて、ほんの一時期にすぎないから、せっかくなので、子どものおもしろがっているところに目を向けていっしょに楽しめたらいいのだと思います。

絵本を読んで、にっこり。うしろからもうひとり「なに読んでるの……?」とやってきた。

絵本そのものが遊びになっている本もある!『ごあいさつあそび』

 絵本で遊ぶのは困るけれど、絵本そのものが遊びになっているのが、『ごあいさつあそび』(きむらゆういち 作)。登場する動物がちゃんと頭を下げて、あいさつができるようになっている「あそび絵本」です。

ごあいさつあそび

 30年前に出版されたときは、その斬新なしかけとインパクトのある大きな顔が登場するのに驚き、「これも絵本?」と思った記憶がある。でも、子どもたちに読んでみると、ちゃんと絵本といっしょに頭を下げたり、自分でしかけを持っていっしょにあいさつしたり。そんなふうに子どもたちがよろこぶ姿を見て、わたしもうれしくなったのを覚えています。

 絵本といっしょに頭を下げてあいさつしながら、子どもたちは、ちゃんとそばにいる大人の顔も確認する。そんな子どもの姿をほほえましく見守る大人がいる。そこが大事なのだと思います。

 そばにいる大人がこわい顔をして絵本で遊ぶことをやめさせて、大好きな本から子どもを遠ざけてしまったら、とても残念。本を大事にするどころではなくなってしまう。

 子どもの世界をおおらかに受けとめるのは、日々の子育ての中では大変なことのように思うかもしれない。でも、子どもがやっていることをよく見てみると、子どもの世界ってとってもおもしろいと思うのです。


安井素子

愛知県に生まれる。1980年より、公立保育園の保育士として勤める。保育士歴は、40年近く。1997年から、4年間、椎名桃子のペンネームで、月刊誌「クーヨン」(クレヨンハウス)に、園での子どもたちとの日々を、エッセイにつづる。書籍に、名古屋の児童書専門店メルヘンハウスでの連載をまとめた『子どもが教えてくれました ほんとうの本のおもしろさ』(偕成社)がある。現在、保育雑誌「ピコロ」(学研)で「きょうはどの本よもうかな」、生協・パルシステムのウェブサイトで「保育士さんの絵本ノート」を連載中。保育・幼児教育をめぐる情報を共有するサイト「保育Lab」では、「絵本大好き!」コーナー(https://sites.google.com/site/hoikulab/home/thinkandenjoy/picturebooks)を担当している。保育園長・児童センター館長として、子どもと一緒に遊びながら、お母さんやお父さんの子育て相談も受けてきた。現在は執筆を中心に活動中。


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描かれている町のモデルのような田舎に住んでいるわけでもないのに、読んでいると思い出す感覚や匂いがあります。こどもの頃の放課後などです。外で遊んでだりして、都会にいても自然を感じとる力が備わっていたのかなと思います。とてもすてきな感覚を思い出すことができました。(20代)

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