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今週のおすすめ

「守り人」シリーズ、上橋菜穂子が作家デビューした作品『精霊の木』

「小さなノーベル賞」といわれる国際アンデルセン賞作家賞を日本人史上2人目の作家として受賞し、代表作「守り人」シリーズでも多数の賞を受賞している上橋菜穂子さん。2019年は、偕成社から『精霊の木』で作家デビューして30周年となる記念の年です。上橋菜穂子さんが30年前に書いて、作家としてデビューした記念すべき作品を、ご紹介します。

舞台は、地球滅亡後に地球人が暮らす惑星、ナイラ

 舞台となるのは、地球滅亡後の宇宙世界。地球人は環境破壊が原因で死の星となった地球を捨て、400年前に中央太陽系の星々に移住をしていました。主人公のシンとリシアは、その星のひとつ、ナイラ星に住むいとこ同士です。
 
 ナイラは、中央太陽系のなかでも辺境に位置する、いわば田舎にあたる星。そして、かつてはロシュナールという先住民が住んでいたものの、地球人の来訪とともに徐々にその数を減らし、100年前に自然にほろびていった––––こんな歴史のある星でもあります。
 
 そんなナイラで生まれたシンとリシアは、将来の進路を決めかねている、という年相応の悩みはあれど、ごくごく平凡な毎日をおくる14歳でしたが、ある2つの出来事からふたりの運命は変わりはじめます。
 
 1つは、リシアが突然、自身がまったく知らない、実際の過去にあった出来事を夢みる超能力に目覚めたこと。そしてもう1つは、先住民ロシュナールの遺跡から、奇妙な光の道があらわれたこと。この、一見、重ならない2つの出来事が、やがて、忘れさられていた歴史の幕を再び開くことになるのです。

目に見えない精霊の力と、人類のたどってきた歴史

 「守り人」シリーズ第1作目の『精霊の守り人』は、人の世と精霊の世が交わる世界で、精霊の卵をその内に宿した皇子を、女用心棒バルサが守るという物語でした。
 
 そして、その7年前に描かれた『精霊の木』も、タイトルにあるとおり、やはり「精霊」が登場します。「精霊の木」は、ロシュナールが祖先より代々守ってきた神聖な木。この木の種を身体にとりこみ、精霊の魂を得ることで、ロシュナールの人々は生きる力を得ることができます。
 
 いずれも描かれるのは、私たち人間がもつ力とは異なる、「精霊」の包み込むようなぬくもりが、人々とその地を支えている世界です。
 
 リシアに芽吹いた超能力と、〈精霊〉を宿したロシュナールの人々の過去が、光の道とともに結びつくこと、それが意味するものとは–––。進化した文明を歩む人々を描く未来の、SFの要素をはらんでいますが、かつて自然と心を通わせ、共生していた人々が多く存在していた、私たち人類の過去の歴史を振りかえりたくなる話でもあります。想像を超えるスケールの大きな物語です。
 
 精霊、異民族との共生、歴史の真実。これまで上橋さんが描いてきた創作の種がそこここに見つけられる、デビュー作です。ぜひお手に取ってみてください。

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今日の1さつ

娘に読ませたくて、ホームズの本を探しておりました。現代マンガ風の挿絵のものもある中、こちらは当時の雰囲気が伝わる本格的な感じで、字も読みやすく、8才の子でもふりがながのっているおかげで、ちゃんと読めたようです。今まで児童文学文庫=岩波少年文庫と思っておりましたが、偕成社文庫のラインナップが気に入り、書店ではまず、こちらの棚をのぞいております。

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