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今週のおすすめ

かこさとしさんの想いがつまった美術の入門絵本、『うつくしい絵』

『からすのパンやさん』や『どろぼうがっこう』などで知られる絵本作家、かこさとしさんは、おはなし絵本だけでなく、知識絵本も多く手がけられました。その中からきょうは、かこさんの想いがつまった美術の入門絵本『うつくしい絵』をご紹介します。


「モナ・リザ」が名画と言われるゆえんは? 作品や作者のひみつに迫る

 『うつくしい絵』は、よく知られた名画が名画と言われるゆえんと、その作者の背景を紹介する絵本です。
 はじめに登場するのは、表紙にもなっている「モナ・リザ」。知らない人はいないくらいの名画です。かこさんはまず、この「モナ・リザ」の女の人の造形のうつくしさを述べています。

「この絵を、よく ごらんなさい。うすい まゆげ、すこし したを むいた ほそい目、(中略)そっと かさねた 手––––そうした すがたや かたちが、みるひとに、しとやかで やさしい かんじを あたえるのです。」

 しかし次に、それだけでこの絵がうつくしいわけではない、として、作者ダ・ビンチがどんな人物だったかを紹介しています。
 
 ダ・ビンチは、筋肉の動き、骨のしくみなど、人の体をよく研究したほか、機械や道具を考え出した、科学者でもありました。そして、それまでとりすました神々しい顔つきで描かれていた宗教画の神様たちを、わたしたちと同じように、心を持った人間として表情ゆたかに描きました。一番すぐれて立派でうつくしい心を考え、その心を絵にあらわしたのです。それが、見る人の心にひびき、ダ・ビンチの絵は「うつくしい絵」といわれるのです。
 
 かこさんは一つ一つの名画について、こうした内容を、やさしい語り口調で、とても明快におしえてくれます。

ゴッホ、レーピン、北斎、ピカソ。うつくしい絵とその作者が多数登場

 ほかにもかこさんは、ゴッホやピカソといった著名な画家の絵をいくつかとりあげ、それぞれのうつくしさ、作者の人間性などを、ていねいに紹介しています。学校の美術の授業でその作品や生涯を習うことも多い、有名な画家ばかりですが、かこさんのお話を語るような文章で読むと、またちがった味わいがあり、大人でもじっくり読み入ってしまいます。

「はげしい いかりや、かわいそうな ひとを すくいたいという いのるような 心を、あらあらしい せんと、かわった かたちと、はいいろだけの 絵に こめたのです。」(ピカソの「ゲルニカ」について)

「どうか、うつくしい絵をみて、うつくしい心をくみとってください」

 本の最後で、かこさんは、読者に想いを語りかけています。紹介されているのは、別々の国にうまれ、それぞれちがった特徴を持った画家たちですが、その絵がどれもうつくしいのは、全員がうつくしい心を持った人だからだといいます。
 
 「そうです。うつくしい 絵は、絵を かいたひとの うつくしい 心が あらわれているのです。うつくしい 絵は、 みるひとが 絵を かいたひとの うつくしい 心を かんじるとき、 いちばん つよく うつくしく ひびくのです。
 どうか うつくしい 絵を みて、絵かきさんの うつくしい 心を くみとってください。うつくしい 絵を かんじとれる ひとに なってください。」
 かこさんの強い想いが、このしめくくりにあらわれています。
 
 美術の入門絵本であると同時に、かこさんの絵画、そしてそれを見る子どもたちへの想いも込められた一冊。多くの著書のあるかこさんですが、この絵本が唯一、自ら望まれた企画だったそうです。芸術の秋にもぴったりです!

同じ美術の入門絵本、『すばらしい彫刻』が29年ぶりに重版!

 今回ご紹介した『うつくしい絵』と同じく、かこさんが手がけられた美術の絵本に、『すばらしい彫刻』があります。1989年出版のこの絵本が、この度29年ぶりに重版されます。(2018年11月下旬重版出来予定)

彫刻のうつくしさを紹介するこの絵本も、ぜひ合わせて読んでみてくださいね。

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今日の1さつ

とつぜん魔女が現れていろいろな話を聞かせてくれるということが不思議で一気に読んでしまいました。岡田さんの本は他の本も場所が学校のものが多くていろいろ想像しながら読めるので何度も読みました。(11歳)

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