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編集部だより

昭和の少女雑誌「少女サロン」(偕成社こんな本もありました 5)

「少女サロン」昭和25年(1950年)6月〜昭和30年(1955年)8月

 
偕成社は、今年創業81周年。
このあいだに、数多くの本が刊行されてきた。
そのなかには、時代を反映しながらも、いまとなっては、
すでに忘却のかなたとなった出版物も数多くある。
ここでは、そんな過去の作品から、「知られざる一品」を紹介していこう。
 
1950年代前半は、少年少女雑誌がいくつも刊行されていた。
終戦から、ある程度の月日が流れ、雑誌が手っ取り早い娯楽となったのである。
当時の少女雑誌だけを見ても、「少女」(光文社)、「少女ブック」(集英社)、「女学生の友」(小学館)、「少女クラブ」(講談社)、「少女の友」(実業之日本社)、そして「少女サロン」(偕成社)と6誌が刊行されている。
さて、偕成社が出していたのが「少女サロン」だ。
 
 
季節はずれでも気分は南半球! 昭和26年8月号の「少女サロン」を見ていこう。
 
少女サロン8月号目次
 
目次を見ると、夏休み関連記事に、「夏休中の衛生 海では山では」というのがある。
1項目を読んでみよう。
 
山の心得記事
 
●マメをだしたマリ子さん●
「美子さん、わたしこまったわ。足にマメができたのよ」
 これは重大なことです。登山する人にとっては、足がいちばん大切だからです。美子さんは登山靴にくつした二足をかさねてはき、くつしたのかかとや底のほうにセッケンをぬって、靴の皮とのあいだのまさつを少なくしてありました。
「こまったわね。でももうすぐ山小屋だわ。そこでゆっくり休みましょう。山ではむりと冒険がいちばんいけないことですもの」
 たどりついた山小屋の中で、たのしく夕食をとり、その夜二人は口がゴムでしまるようになった布の袋をだし、じぶんのからだをすっぽりとその袋の中に入れ、首から上だけだして寝ました。 
 こうすればあたたかく、ノミもつきませんから、安らかな夢路をたどることができるでしょう。
 
 あえて「寝袋」という言葉を使わず、夢路をたどらせようとする配慮。戦後の復興から高度成長期へ突きすすむ社会で、読者を優雅な世界へ誘いたい! これを書いた東京都中学校理科研究会長は、できれば「ノミ」という言葉も避けたかったのではないか。 
 
 この少女雑誌からひしひしと感じられるのは、編集者らの読者に対する愛情だ。
それは、ある意味「親心」にも近い感情といえる。
一例として「食べかたでわかる性格占い」というコラムを読んでみよう。
 
性格占い記事
 
「食べかたの早い人」「ゆっくり食べる人」など、8つのタイプが書かれている。
食べかたが早い人は勝気でせっかち、食べかたがおそいのは穏健着実で石橋をたたいてわたる人。まあ、ここまではうなずける。しかし、なかには「?」と思わせるものも出てくる。
「天井をにらんで食べる人」
 いったいどのような性格なのだろう。「この人は、短気ですが、人とよく口論し、けっしてかぶとをぬぎません。そのかわり、義侠心に富んでいますから、いったん引きうけたことはきっと実行する、たのもしいお方でもあります」
「肥っていても小食の人」
「この人は、人の頭に立つ人で、したがって尊敬されるりっぱな方です」
おそらく、当時の編集部にこのような人がいたのだろう。たしかに編集者にこういうタイプはいそうである。
そして、最後に書かれているのが「食べかたのきれいな人」で、「上品で、どこからもお嫁さんに来てくれと降る雨のごとく豊かな縁談の持ち主です」
筆者は、これが書きたかったのだなあ。
性格占いを通して「きれいな食べかた」をうながす意図が見え見えのコラム。
この時代は、そんな「おせっかい」加減が雑誌にもあらわれている。
 
しかし、そんな時代も長くは続かなかった。
「少女サロン」は、昭和27年(1952年)1月号の15万5千部まで部数をのばすが、徐々に本誌の充実よりも芸能ネタや付録合戦にしのぎをけずるようになる。折しも「漫画王」(秋田書店)の創刊で第一次マンガブームの口火が切られ、「明星」(集英社)、「平凡」(凡人社=マガジンハウス)といった芸能専門雑誌の刊行もはじまり、少女雑誌はその役割を終えるのであった。
 
 
(編集部 早坂)
 

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今日の1さつ

毎日をまじめにコツコツ生きるトガリネズミを見ていたら、自分の日常ももしかしてこんなに静かな幸せにあふれているのかも、と思えました。海に憧れて拾ったポスターを貼ってみたり、お気に入りのパン屋さんで同じパンを買ったり。駅中の雑踏やカフェでふとトガリネズミを見かけそうな気がします。(40代)

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