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編集部だより

偕成社こんな本もありました。 第4回

『母と子の教育相談 中学編』
1974年(昭和49年)刊行
金沢嘉市、丸木政臣/共著 伊勢田邦貴/絵 

 偕成社は、今年創業82周年。
このあいだに、数多くの本が刊行されてきた。
そのなかには、時代を反映しながらも、いまとなっては、
すでに忘却のかなたとなった出版物も数多くある。
ここでは、そんな過去の作品から、「知られざる一品」を紹介していこう。

 人間、悩みはつきない。教育相談とか人生相談というのは、新聞やラジオの分野と思われがちだが、むかしはテレビでもやっていたようだ。この『母と子の教育相談』は、TBSテレビが毎週木曜日の午後2時から放送していた番組を活字にしたものである。
この本は、幼児編、児童編、中学編の3分冊になっており、教育問題の第一人者が母親たちの悩みに答えている。

「中学編」の目次をみてみよう。当時の親たちが何に悩んでいるのかよくわかる。
「中学3年の男子、学校に行かず町を遊びまわっている」
「女子中学生、流行歌手にのぼせ上がって勉強もそっちのけで心配」
 いまもむかしも、親の悩みはあまり変わっていないようだ。
「中学3年の男子、日記を見ると生活が崩れているようで困っている」
 お母さん、子どもの日記を読むなよ。
 なかには、こんな悩みも。
「オートバイやエレキに夢中になっていて困っている」
「自室にとじこもってラジオばかり聞いているので心配」
「女子中学生の長電話について」
 現代の親からみれば、「のどかな時代」にうつるかもしれない。

 さて、全体を通してみると、やはりこの時代を映すような悩みというものはあるものだ。たとえば「父親の不在」である。企業戦士としてはたらくお父さんと子どもとのコミュニケーション不足は、一般的な家庭では当たり前だったのである。

司会:なんだかいまの日本の母親は、父親が忙しすぎて父親の分も兼ねて全部の責任をしょっているような感じがありますね。
金沢:気の毒なことです。父親も好きで忙しくしているわけじゃありませんが、社会そのものがモーレツ社会ですからね。でもね。どんなに忙しくたって、青年期にさしかかった子どもには父親が必要なんですよ。
司会:日本の父親全部にきいてもらいたいようなお話ですね。問題は、父親が出るときのタイミング、あるいはそのかかわり方でしょうね。
丸木:たまの休みの日、お父さんが「おい、ちょっと外へ行くか」と言って、歩きながら肩をならべて「なんだ、びっくりしたな、おまえおれの背より高くなったじゃないか」というふうな、かたわらで話をするというような感じが必要ですね。 ー中略ー 何かことがあってからお母さんに尻をつつかれて「一郎、ちょっと話がある」なんて改まって話すから、子どものほうも反発するんです。

 わかっちゃいるが、いつの時代も父親というのは変に緊張して、どうもギクシャクしてしまうものだ。

「おい、ちょっと話がある」
「なんだよ」
「びっくりしたな、一郎」
「だから、なんだよ」
「おまえの背よりおれ高くなっちゃったじゃないか」

 そして中学生ともなると、「性」の問題についても避けられない。
ある教育研究所がおこなった性のアンケートをここではとりあげている。
「もし異性の友だちができたら?」
その回答は以下のとおりである。

ちなみに「モミモミ」は肩のこりをほぐす、ではない。
「何もない・何もしない」
「何もしない」は、回答として受け入れられる。だが、「何もない」とはどういうことなのか。この虚無感は、本に出てくる相談内容より深刻のような気もする。

 このような本を読んであらためて痛感するのは、「相談できること」の重要性だ。
そういう意味からすると、「相談できない人」のために、これらの本の存在意義があるのだろうな。

 

(編集部 早坂)

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