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編集部だより

アリはきらわれものだから・・・

 ごぶさたです! 編集部の刑部(おさかべ)です。
 
 いやいや、今年の夏は、ほんとうに暑かったですね。
 前にもここで書いたように、僕は毎日、会社のひとつ前の四ツ谷駅で降り、市ケ谷の偕成社まで、30分近く歩いて通っていますが、6月からすでに暑く、7月、8月は毎日、命の危険を感じていました。
 
 外濠公園の中や、外濠に沿う道(外堀通り)の歩道を歩くぶんには、街路樹などもあり、まだマシなのですが、市ヶ谷駅周辺の開けたところにくると、もはや僕の体は何からも隠されることなく、直射日光にカッキーンと全身さらされてしまい、そのとたん急に歩けなくなるぐらい、体がダメージを受けるのでした。そして、会社に着くころにはフラフラ・・・ほんとうに参りました。
 
 さてさて、そんなツラい通勤路で、僕の心をワクワクさせてくれたものを、今回は特別に公開します。
 そんなこと言って、また小さな虫の話?
 ピンポーン! そこまでは当たりですが、まあ、だまされたと思って、この動画を見てください。
 
 
 はい。見ていただけましたでしょうか?
 
 「なーんだ、大きいアリと、小さいアリが、ただウロウロしてるだけじゃん!」「小さい虫のなかでも、よりによってアリ? ふつうすぎて、つまんねー」「かわいそうだから、唯一おもしろいところをあえて言うとすれば・・・大きいアリのほうが小さいアリにビビッてるところぐらいかな・・・」なーんて声が聞こえてきそうです。
 
 そう言うアナタは、ズバリ・・・・甘い!
 
 大きいアリと、小さいアリでは、アリませんよ。大きいのと小さいの、どちらかは、アリではアリませんよ。
 
 「えっ! アリではない? 意味わからん」「それは・・・なんか、なぞなぞみたいな、コトバ遊び的なこと?」「わかった、あれでしょ。アリに似た、別の昆虫。これ、ぜったい当たりでしょ! でもスゴイね。これ、みんな、ふつうアリだと思うよね」
 
 おしい人が1人いましたが・・・全員不正解。
 
 アリではないのは、大きいほうでした。
 大きいほうのアリ、いえ、まるでアリのような生きものは、クモです。アリグモという、クモのなかまです。クモはあしが8本で「昆虫」ではありませんから、「別の昆虫」と言ったアナタも、残念ながら不正解だっだというわけです。
 
 クモのなかまには、巣(網)をつくって虫をつかまえる「造網性」のクモと、歩きまわって自分で虫をつかまえる「徘徊性」のクモがいますが、アリグモは徘徊性のクモの一派です。
 
 アリグモがアリに似ている、いえ、似せているのは、擬態をしているからだと考えられています。その擬態の目的は、アリに似せることで外敵から身を守るためだといわれています。
 
 「アリに似せることで外敵から身を守る、だって? そもそも小さくて弱いアリに似せたところで、身を守るなんて、できるわけないじゃん」
 
 それは、ちがいます。おどろくかもしれませんが、アリは、自然界のなかではじつは手ごわい昆虫で、昆虫のみならず、さまざまな生きものたちのなかで、かなりきらわれているのです。
 
 なぜなら・・・アリは集団でくらしていますよね。しかも大あごをもっていて、おしりからは蟻酸という毒液を出します。そして、獲物を見つけたり、敵がせめてきたりしたときには、それをみつけた1ぴきがすぐになかまに報告。その報告は一気に集団内に伝わり、するとアリたちは一致団結して相手に立ちむかい、それぞれが大あごでかみつき、蟻酸を噴射して・・・そんなときのアリの集団は、とても統率のとれた軍隊のようです。
 そのようなアリは、1ぴき1ぴきはとても小さいけれど、生きものたちにとって、かかわりたくない、近づきたくない存在なのです。
 
 こんどは、写真を見てください。アリグモの写真が2枚です。
 
 
 まず、左側の写真は、さっき動画でお見せしたアリグモです(ブレて画質がわるくてごめんなさい)。
 
 さきほどの動画ではパッと見、何から何までがアリにそっくりで、具体的にどこが似ている、どこを似せている、と分析するのはむずかしかったので、ここでちょっと解説しておきますね。
 
 昆虫の体は頭部・胸部・腹部の3つに分かれていますが、クモの体は頭部と胸部が一体となった頭胸部と腹部の2つにしか分かれていません。その意味では、アリはまるで昆虫の代表選手のような体をしていて、体が頭部・胸部・腹部の3つにはっきりと分かれています。
 
 アリグモはクモですから、体は頭胸部と腹部の2つにしか分かれていませんが、頭胸部全体が細長く、その頭側は丸く盛りあがり、胸側とのあいだにくびれがあるので、まるで頭部と胸部が独立しているように見えます。さらに腹部は円筒形で、おしりの先端がキュッとすぼまり、とがっています・・・ね、アリっぽいでしょう。
 
 でも、おどろくのはここからです。写真で、アリグモのあしの数を数えてみてください。
 
 「頭に触角が左右一対付いていて、あしは、にぃーしぃーろ。あれ、3対? 6本しかないじゃん? クモだから、あしは8本のはずでは?」
 
 いえいえ、ちゃんと8本ありますよ。
 クモのなかまには、もともと触角はありません。触角のように見えたのは、いちばん前の1対のあしです。でも、地面にふんばらず、いつも持ちあげて構えているので、あたかもアリの触角のように見えます・・・いやあ、じつに巧妙ですなあ。
 
 そして、いまさらですが、動画を見ればわかるように、アリグモは、アリにそっくりなその体で、さらには・・・そのせわしない動きも、アリに似せていると思われるのです! ホーッ!! スゲェー!!
 すみません。つい、動画を撮っているときの興奮がよみがえってしまいました。
 
 さて、右側の写真は何だったかというと、おそらく同じ種のアリグモの、オスです。
 ということで、左側の写真は、メスのアリグモなのでした。
 
 メスとオスで、どこがちがうと思いますか?・・・腹部の大きさが、メスは大きく、オスは小さい感じがしますね。メスはお腹の中で卵をつくるから、腹部が大きいのでしょう。でも、それ以上にちがうのは・・・そう、頭胸部の先の形です。
 
 メスの頭胸部の先は、アリの頭のように丸っこい形をしているだけですが、オスの頭胸部の先は、丸っこい形の先に、何かが大きな四角っぽいものが付いています。これは大あごなのです。
大あごなので、ぱかっと左右に開くのですが、この写真では分かりにくいので、別種のアリグモのオスの大あごの閉 → 開の写真を下に載せておきますね。
 
 
 
 アリグモのアリ擬態は、オスはイマイチですが、メスはたいしたものですね。
 これはきっと、交尾をすませれば用のない?オスとちがって、卵を産んで子孫をのこすメスが生きのこるほうがいいということなのでしょうか。うーん、やはり悲しきオス・・・
 
 さあ、みなさんは、いぶんアリグモにくわしくなりました。
 ここで締めに、さらに秘蔵写真を・・・
 

 
 さんざんアリグモの話をしてきたので、何がアリなんだか、アリグモなんだか、クモなんだか、わからないかもしれませんね。
 
 これは、アリを食べる、アオオビハエトリというクモの写真です。下がアリで、上がアオオビハエトリです。アオオビハエトリは、アリグモではありませんが、同じ徘徊性のハエトリグモのなかまで、アリを食べるクモとして知られています。
 
 アオオビハエトリは、体つきはアリグモほどアリに似ていませんが、アリグモと同じように、いちばん前の一対のあしを、いつも持ちあげて歩いているそうです。これは一種の擬態と考えられていて、アリのふりをしてアリに近づき、すきをついてアリにおそいかかるのだといいます。
 
 同じクモで、同じアリに擬態をするにしても、かたやアリグモは、アリのまねをすることで身を守ろうとし、かたやアオオビハエトリは、アリのまねをしてこっそりアリに近づき、アリを食べる・・・いやあ、僕は擬態のテーマが大好きですが、なかでも「まねする」擬態は、ほんとうに深いと思います。
 
 そんな「まねする虫」たちに興味のある方には、僕が編集を担当した以下の本がオススメ。もちろん、アリグモも登場します。
 
海野和男のさがしてムシハカセ③
さがそう!まねする虫
 
 また、擬態といえば、草や木にかくれる虫たちの擬態のほうが一般的かもしれません。そんな「かくれる虫」たちに興味のある方には、上と同じシリーズの以下の本がオススメ。
 
海野和男のさがしてムシハカセ③
さがそう!かくれる虫
 
 ついでに、同じシリーズの本で、虫の分類をテーマにした以下の本もオススメです。チョウやガ、クワガタやカブトムシなど、似たものがいるけれど、どこがちがうのかな?
 
海野和男のさがしてムシハカセ①
さがそう!ちがう虫
 
では、またいつか、お会いしましょう!
 
(編集部 刑部 聖) 

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表紙の絵やとちゅうの絵がかわいいのでレンちゃんや高田さんの気分になれて本の中の世界にすいこまれるのでドキドキハラハラしておもしろかったです。(9歳)

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