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編集部だより

描き文字と坂川知秋さんのこと

 みなさんこんにちは。
 
 いよいよ師走、本格的に寒くなってきました。
 「師走」の文字通りランニングばっかり、編集部の藤田です。
 
 さて今回は、絵本づくりの舞台裏をご紹介します。
 「裏」といってもお話しするのは「表」の話、絵本の表紙のことです。
 
 偕成社には、おかげさまで昔から読みつがれている絵本があります
 
 これらの作品、担当編集者は同じ人ばかりではありませんが、共通してかかわってくださった外部の方がいるんです。この方。
 
さかがわちあきさん
 
 デザイナーの坂川知秋(さかがわ・ちあき)さんです。
 すでに故人となりましたが、偕成社が何十年とお仕事をお願いしていた方です。具体的にはどんなお仕事だったのでしょうか。
 
 まずはこちら。
 
すてきな三にんぐみ
 
 もうひとつこちら。
 
ノンタンぶらんこのせて、のちょっとアップ画像
 
 さらに、もういっちょう。
 
はらぺこあおむしのタイトル文字アップ
 
 もうおわかりですよね。
 そう、坂川さんは数多くの「タイトル文字」を描いてくださった方なのです。わーパチパチ。
 
 絵本にかぎらず、本のタイトル文字っていうのは、とっても大切。
 本屋さんには、あまたの本がでならんでいますが、お客さんに、ぱっと見で「手にとりたい!」と思っていただかなくてはなりません。
 
偕成社のロビーにならぶたくさんの本の表紙画像

本屋さんではなく、偕成社のロビーですが、並べるとどれが目立ち、どれがそうでないか、なんとなくわかるかも?

 
 じゃあ、派手にすればいい? そう思いますよね。
 しかし! 子どもの本の場合、目立つことはもちろん大事ですが、もっと大切なことがあるのです。
 
 それは「読みやすさ」。
 子どもの本の読者は、もちろん子ども。だから、きちんと読める文字でなくてはなりません。目立つようにしたい、でもきちんと読めなくてはいけない、そんな絵本特有ともいえるむずかしさをふまえて、やさしくユーモアのある文字を描いてくださっていた方が、この坂川知秋さんなのです。
 
大型バイクと写真におさまる坂川さん

オートバイがご趣味。いつもバイクでさっそうと来社なさった

 
 坂川さんは、タイトル文字だけでなく、さし絵にそえる手書き文字や、本の中の地図なども手がけてくださいました。
 
『ぼくだけの山の家』本文に添えられたイラストと坂川さんの手書きの文字

『ぼくだけの山の家』の本文の書き文字。親しみがありますね。絵と英文字は原書のものです

 
『神奈川県の民話』本文さし絵の絵地図。神奈川県の地図の上にいろいろとかわいい絵がある

イラストによる地図も。本の内容に合った民藝品のような味わい。『神奈川県の民話』より

 
 今回、ご家族にもお話をうかがいました。
 
 「父は仕事をどんどん受けてくるんです。まず断りませんでした。でも、ふしぎと旅行にはけっこう連れていってもらいましたね」
 そうなつかしそうに語るのは、娘の坂川由美香さん。坂川さんのデザイン事務所「AD・CHIAKI」を引き継いで、ご自身もデザイナーとして活躍なさっています。
 
 「小さいとき、家には絵本がズラーっとあったんですが、ほとんどが仕事をした出版社さんからいただいたものです。ほかにも父がたずさわった本は、家に50年ぶんぐらいあって、もう大変なことになってました」
 
 手がけたのが例え小さな地図でも、出版社は本ができればお送りするので、50年ぶんであれば数千冊、というレベル。ぎゃ!
 
 「父の仕事を手伝いはじめたとき、私が切り貼りした文字が少しでも曲がってると、許せないらしく、ぜんぶ父が貼り直してました。やっぱり職人だったんですね。私は自分でやり直すのではないので、楽でしたけど(笑)。いまは姉も私も、デザインの仕事についてます。でも父の描き文字だけは、いまでも真似できませんね」
 
ちょっとはにかむ坂川由美香さんの画像。手には『はらぺこあおむし』と『ノンタンぶらんこのせて』

とても楽しそうにお父様の思い出を語ってくださった坂川由美香さん。「バイクの免許もなかば強制的に取らせられました(笑)」

 

 坂川さんはとってもやさしい方で、私が新人で社内で緊張していたときも、坂川さんが会社にくると、なにかホッとしたものでした。
 今回、由美香さんにそれをお伝えできたのは、私自身うれしかったことのひとつです。
 
 こちらは偕成社が坂川さんにお願いした、さいごのタイトル文字。2011年のお仕事です。
 
『ほげちゃん』書影

『ほげちゃん』。「ほげっ」とした文字で心もなごやかに。編集担当者は「昭和っぽくなつかしいイメージで」とお願いしたそうです

 
 作者やぎたみこさんの描く、そこはかとないユーモアのある「ほげちゃん」をタイトル文字の側面からも、つよく裏打ちしてくださってます。『ほげちゃん』は、いま3作目まで刊行されています。
 
『ほげちゃん』シリーズ3作画像。『ほげちゃんまいごになる』『ほげちゃんとこいぬのペロ』

「ほげちゃん」3作そろいぶみ

 
 絵本づくりにあたり、いまでは「文字だけのお願い」ということは少なく、本全体のデザインである「装丁」をお願いする形のほうが、だんぜん多くなりました。
  そんなことからも、この出版業界において坂川さんのような仕事は、いまやなつかしい存在となってしまったのかもしれません。
 また偕成社にかぎらず、会社というものは、坂川さんのような外から支えてくださる方の力が欠かせません。そんなことも思って、今回、坂川さんをご紹介しました。
 
 さあ、メリークリスマス! 
 みなさんも「すてきな描き文字タイトル」という視点で、プレゼントの絵本を選んでみてはいかがでしょうか。
 
 よい新年をお迎えください。
 
坂川知秋
1942年、岡山県美星町(現・井原市)生まれ。20歳で上京し書体デザイナーの稲田茂のもとで修行後、23歳でフリーのデザイナーに。学研での仕事も多く「大人の科学マガジン」の付録説明書の絵なども長く手がけた。2012年逝去。
AD・CHIAKIウェブサイトhttp://blog.livedoor.jp/teto95-adchiaki/
 
 
(編集部 藤田)

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今日の1さつ

娘がまだ0歳のときから読み聞かせています。本の絵、色、デザイン、こまかいところまで子どもは見逃さないんですね。親がスルーしてしまうところも気がつく、そんなおもしろさが子どもには魅力なんですね。絵本から子どもがはじめて学ぶことはたくさんあります。これからも愛読したい本です。(2歳・お母さまより)

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