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偕成社文庫100本ノック

第97回

秘密の花園

『秘密の花園 上』バーネット 作/茅野美ど里 訳

 自分の「思いこみ」が、何かのきっかけで180度変わった経験はありませんか。大人になるにつれ、「思いこみ」というのはなぜだかどんどん増えてきているような気がします。当り前に思っていた事柄が、別の視点からみるとまったく違うものであることに気づくこと、そのような気づきを自分の力では出来ないことが多くなってきました。自分と同じ考えの人と集まることは、楽で生きやすいもの。しかし、そうではない人との交流はときに、新しい風を吹かせてくれることがあります。

『秘密の花園』は、児童文学の名作として様々な魅力をもつお話ですが、「思いこみ」で固まってしまったある親子の心を、自然の力と、そして子どもの原動力で壊していく物語、ともいえるのではないかと思います。

 両親を亡くし、イギリスに住む叔父の屋敷に身を寄せることになったメアリー。彼女はひっそりとしたその屋敷の庭に、入口もわからない、閉ざされた花園があることを知ります。やがて彼女は、コマドリの導きで、その秘密の花園の鍵と入口を見つけることになるのですが、それと時を同じくして、もうひとつの隠された部屋をみつけることになるのです。それは、叔父のひとり息子、コリンの部屋でした。叔父は、最愛の妻を亡くした悲しみのあまり、その忘れ形見であるコリンに会うことを拒み、かつて妻と過ごした思い出の花園の扉も閉ざしていたのでした。

 10年ものあいだ父親に幽閉され、「自分はじきに死ぬんだ!」と思いこんでいた貧弱なコリンと、人生に絶望した叔父、そしてその二人の精神性を象徴するような無惨にも枯れはてた花園(実は花の芽は死んではいなかったのですが!)でしたが、長年閉ざされていた扉がメアリーによって開かれたことをきっかけに、近所に住む自然を愛する牧童ディコンの助けにより、みごと本来の姿を取り戻し蘇っていきます。

 過去に囚われる叔父や、主人に叱られないようにと常に目を伏せて過ごす屋敷の大人たちの傍(かたわ)らで、弱々しかったコリンが、メアリー、ディコンとともに自らがもっている力をつぎつぎに発揮していく姿には、「未来は明るい!」とわくわく読み進められる安心感があります。本作は、子どもにとっては希望を与えてくれる物語であり、大人にとっては未来をつくる子どもたちの(若い子たちの)力に希望をたくせる物語なのです。

 ところで、この時期は就職活動が盛んですね。大学生のみなさんにはぜひ、来年から働く職場で「新しい風を吹かせてやるぞ!」という意気込みを大切にしてほしいと思います。そして、先輩になる私たちも、彼らが先達である我々の「思いこみ」の鍵を開けてくれるメアリーやディコンかもしれないという気持ちで、楽しみに見守って行きたいものですね。私たちの毎日にも、実はよく眼を凝らせば、すぐ近くに秘密の花園が眠っているかもしれません!

(販売部 宮沢)

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