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偕成社文庫100本ノック

第72回

ギリシア神話

『ギリシア神話』高津久美子・高津春繁 訳

 上半身は人間だけど腰から下は馬のケンタウロス、あらゆる苦しみと災難が詰まっていて、一度あけたら大変なことになってしまう「パンドラの箱」、髪の毛がヘビで、目を見ると石になってしまうメデューサ……何気なく知っている言葉や生きものですが、すべてギリシア神話に登場するものだということをご存知でしたか? もっと身近な話では、占いなどで良く使われる、誕生日ごとに決められている「星座」。あの星座も、ほとんどがギリシア神話を元につくられています。
 日本から遠く離れたギリシアの、しかも何千年も前に語られた物語が今も生きているのは、考え出すとクラクラしてくるぐらいすごいことです。きっと初めに語りだした人も、まさかこんなに長く伝わるとは思ってもみなかったんじゃないでしょうか。どうしてそんなに長く多くの人に伝えられたのか? それはやっぱり、お話がおもしろかったからだと思います。

 ギリシア神話とはその名の通り、ギリシアで語られた神様のお話です。神様のお話、と聞くとものすごく真面目そうです。そもそも神様、というのが神々しく、間違ったことなどしない常に正しい者、というイメージがあると思います。が、ギリシアの神様たちは違います。確かに姿を変えたり人の願いをかなえたり、神様らしいすごい力はありますが、やっていることは、人を好きになって追いかけたり嫉妬したり喧嘩したり、まったく神々しくありません。むしろすごい力を使ってそんなことをしていいのか! と言いたくなるようなことばかり。
 特に一番偉いとされているゼウスという神様の惚れっぽさにはびっくりします。嫉妬深い女神のヘラを奥さんにしているのに、他に気に入った女の子を見つけたら手段を選びません。エウロペという女の子を見つけた時も牛に化けて油断させ、彼女が背中に乗った瞬間に猛ダッシュして海の向こうの島までさらってしまいました。このときゼウスが化けた牛の姿が、星座の「おうし座」になっているそうです。
 そんなわけで神様が人間にちょっかいばかり出しているので、神様と人間の間の子どもというのもたくさん出てきます。その人たちは普通に人間として暮らしていますが、ちょっと力持ちだったりちょっと頭が良かったり、ちょっとお父さん(もしくはお母さん)の神様に守られて、不思議な力があって、英雄になっていたりします。ギリシア神話とはそんな人たちの冒険物語も書いているのです。

 1人の人が書いた長い物語ではなく、色々な言い伝えやお話を集めたのが主なギリシア神話。すべて読むと大変な量になってしまうので、いろんな人が読みやすく直してまとめています。今日本で出版されてる「ギリシア神話」も本当にたくさん、色んな種類があります。その中でも偕成社文庫の『ギリシア神話』は、簡単にしすぎず、難しすぎず、神様の話と英雄の話を少しずつ、面白いところをつまみ食いできるようになっています。まずこれを読んで、もっと読みたいと思ったところがあったら、その部分をもっと詳しく書いているものを探すという楽しみができます。
 何千年も前から語り継がれている奥の深いギリシア神話。星のきれいなこの時期に、星座の元になったというあまり真面目でない神様たちのお話を、ちょっと真面目に読んでみるのはいかがでしょうか。

(販売部 高橋)

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