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偕成社文庫100本ノック

第63回(プレイバック中!)

レ・ミゼラブル

『レ・ミゼラブル 上』ユーゴー 作/大野多加志・岩瀬孝 訳

 朝むにゃむにゃしながら起きて、会社へ向かってお仕事をし、帰宅してご飯を食べて眠る……、という同じような日々を過ごしているわたしですが(もちろん、その中にちょこちょこ楽しいことがあり、お休みの日にはパーッと遊ぶことだってありますけれど!)、そういう毎日のなかにいると、「いつでも優しく徳のある、美しい心もちでいたいなあ」と思ってはいるものの、ついついさぼってしまいます。
 口角をあげてにこっと微笑んでいたいのに、気付くとムッと口をむすんでいたりとか……。

 きょうわたしがご紹介する『レ・ミゼラブル』(上・中・下巻)には、実にさまざまな人物が登場します。
 わたしが憧れる以上の徳に満ちあふれた司教さまもいれば、ええっ、そこまでする!? と言いたくなるほど卑劣な宿屋のおやじもいます。
 1800年代というずいぶん昔に書かれた物語なので、描かれるフランスの街のようすはかなり退廃的でおどろおどろしく、「貧困」という一言では表せないようなひどい暮らしをしている貧しい人びとが数多く出てくるのです。

 でも不思議なのは、とても古いお話だということを読んでいてよーく分かっていながらも、「昔話感」がまったくないということ。なんというか、名作なのに、「うむ、名作を読んでいるぞ」というような一歩引いた落ち着いた雰囲気で読めなくて、ぐいぐい引っ張りこまれ、思いきりハラハラさせられてしまうのです。
 次々に起こる事件が本当にドラマチックに描かれていて、(だめだ、見つかる……!)とか(はやく逃げて!)と、焦ってページをめくってしまいます。

 そんな作品だからなのか、司教さんや修道士、悪党や逮捕された囚人など、わたしたちの日常とはかなり離れた人びとをつい身近に感じ、「ミリエル司教のような心でいなくては……」などと思ってしまうのかもしれません(恐れ多いにもほどがあるのですが)。
 有名な登場人物ジャン=ヴァルジャンが、司教に助けられた後もなお悪さを働いてしまって途方に暮れるところなども、「もうしないぞと思ってもやっぱりダメなときもあるよなあ~」と共感してしまいました。

 わたしがまさにそうだったのですが、「名作と言われるけど、読むには難しかったりつまらなかったりするのでは……」と敬遠している方がいたら、ぜひ読んでみてほしいです。まさかこんなに古い時代の人びとに振り回されるとは!
 夏休みの読書に、ぜひどうぞ。

(販売部 松野)

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