icon_twitter_01 icon_facebook_01 icon_youtube_01 icon_hatena_01 icon_line_01 icon_pocket_01 icon_arrow_01_r

偕成社文庫100本ノック

第13回(プレイバック中!)

ポー怪奇・探偵小説集(1)

『ポー怪奇・探偵小説集(1)』E・A・ポー 作/谷崎精二 訳

 きみは何が一番怖い? 顔の半分が焼けただれた幽霊?
 紅蓮の火を噴くモンスター? トイレですすり泣く花子さん?
 もしかするとお母さんかも知れないな。でも僕は思う。一番怖いのは勝手な思い込み、妄想なんじゃないかと。

 この短編の主人公もそんな一人だ。
 まだ医学の発達していない昔、心臓が止まったように見える病気を死亡と間違われ、生きたまま埋葬された事は本当にあったらしい。西洋では遺体をそのまま埋める。被害者はやがて意識が戻るだろう。でもそこは真っ暗な地面の底、石棺の中だ。声を上げても誰にも聞こえない。食べ物もない。身動きすら出来ない。空気が少なくなって気を失うならまだいい。ぎりぎり生きられるほどの空気があったりすると、もしかしたらウジ虫が目や耳や口の中に入ってきて、少しずつ、少しずつ、生きたまま食べられてしまうかも知れない。妄想が生んだ恐怖には終わりがなく、やがて男は狂気の中へ踏み込んでゆく。

 この作品集には「ひょっとしたら本当にあるかも」と、つい想像してしまう怖い話が集められている。それは見えない怖さ。言葉に書かれていない部分を頭の中で想像する。これこそが、テレビや映画にない読書本来の醍醐味だと思う。

(販売部 西川)

この記事に出てきた本

バックナンバー

今日の1さつ

おもしろかったし楽しかったし うーぱーるーぱーとおたまじゃくしとかたつむりがとてもかわいかった。(5歳)

pickup

new!新しい記事を読む