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偕成社文庫100本ノック

第12回(プレイバック中!)

透明人間

『透明人間』H・G・ウェルズ 作/雨沢泰 訳

 主人公が嫌いという物語はそう多くはありません。私にとって、この物語の主人公がそれにあたります。そうです、透明人間のことです。自分勝手でわがままな透明人間=科学者グリフィンに、主人公でありながら感情移入ができないのです。彼はまさに傲岸不遜なのですから。それでも『透明人間』は大好きな1冊なのですが。

 透明人間になる、空を飛ぶ、超能力を手に入れる。そんな魔法のような力が手に入ったら!と、誰もが一度は想像しますよね。私もどれだけ夢みたことか。もし透明人間になれたらこっそり飛行機にのってまだ知らない世界を旅して、お腹がすいたらレストランで誰かが頼んだステーキをつまみ食い。飽きたら旅人にいたずらをしかけ、高級ホテルの空き部屋にゆっくり泊まり、元気が出たらまた次の国へ……そんなイメージが浮かんできます。

 でも、透明人間ってそう簡単なものではありませんでした。科学者グリフィンは透明になる薬を自ら試し、その実験に成功します。しかし、透明なのは体だけですから、外に出るには裸にならなければいけません。裸で外に出るなんて想像しただけでスースーします!自分の姿が見えていたらと考えると服を脱ぐ勇気もわきませんね。裸足で歩けば怪我をするし、みんなから自分は見えないのでぶつかられ、何度も馬車にひかれかけます。冬がくれば耐えられない寒さにこごえ、服を着ても透明な顔まで隠さなければならず、とても不審な格好になってしまいます。

 グリフィンは元の姿にもどる薬を開発できず、お金もなくなり、実験を邪魔する人間をうらみはじめます。自分を理解してくれない人間たちに復讐するように、人々を傷つけていくのです。とても自分勝手ですよね。自分で透明になったくせに。だから、私はグリフィンを好きにはなれないのです。それでも、透明になったときのリアリティある表現や、グリフィンが次々とおこしていく事件がどう決着するのかハラハラさせられ、読むのを止められない物語でもあるのです。

 驚くべきは、この物語が100年以上前にうまれたこと。これだけ科学が発達した現代に読んでも遜色ないなんて、H.G.ウェルズはすごい!物語の後半で、グリフィンが透明人間になる薬を開発した理由がほのめかされています。そこにあるわずかな人間的な部分に、この物語の秀逸さがあるのかもしれません。

(販売部 大西)

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