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たまねぎとはちみつ

冬(2)

 道沿いにならぶ家々の窓に、ぽつりぽつりとあかりがともりはじめている。杉本家の1階の、レースのカーテンがかかった窓のひとつからも、玉子色のあかりがもれていた。杉本さんなのか、その家族なのか、少なくとも誰かは家の中にいるようだ。どこからか、カレーのにおいが流れてくる。
「そろそろ帰るか」
 俊太が立ちあがった。
「最初からうまくいくほうが、珍しいからな」
 低い声を作り、おじさんの口真似をしてみせる。白い息が、漫画のふきだしみたいに口からこぼれ出た。
「また来週だね」
 沈んだ声にならないように、千春は注意した。一度失敗したくらいでへこたれてはいけないというのも、おじさんから教わっている。

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  • 瀧羽麻子

    瀧羽麻子

    1981年兵庫県生まれ。京都大学経済学部卒業。『うさぎパン』で第2回ダ・ヴィンチ文学賞大賞受賞。著書に『左京区七夕通東入ル』『左京区恋月橋渡ル』『左京区桃栗坂上ル』(小学館)『松ノ内家の居候』(中央公論新社)『いろは匂へど』(幻冬舎)『ぱりぱり』(実業之日本社)『サンティアゴの東 渋谷の西』(講談社)『ハローサヨコ、きみの技術に敬服するよ』(集英社)など。

    写真撮影/浅野剛

今日の1さつ

おかしがたくさん、おいしそうに描かれており娘は楽しそうに読んでおりました。親の私は、前作では小さな子どもだった4羽の子がらす達が大人になり、独立していく姿に感動して涙が出ました。(2歳・お母さまより)

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