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たまねぎとはちみつ

冬(2)

 低くうめき、降参するように両腕を上げた。
「実際、おじさんってどう思われてるんだろ?」
「あっ」
 千春はつぶやいた。
「なに?」
「聞いてみればいいんじゃない? どう思われてるのか」
「へ? おじさんに?」
「ちがうよ。本人に直接」
 千春は俊太の手からペンをとって、新しい行に書きこんだ。
〈すぎ本さんと話をしてみる〉

 さっそく次の日に、千春たちはまたバスに乗って出かけた。
 ふたりで考えた「おたすけ作せん」は、そう複雑なものではない。先週と同じ、土曜日の昼間に、あの家の前で待ちぶせする。杉本さんが出てきたら声をかけ、おじさんが会いたがっていると伝える。
 おじさん本人には、今のところ黙っておくことにした。ないしょで事を進めて驚かせよう、と俊太がはりきっているのだ。千春も反対しなかった。おじさんに打ち明けるとしたら、尾行したことまで話さなければならない。それに、もしも作戦が失敗に終わってしまった場合に、おじさんをがっかりさせたくない。盛りあがっている俊太に、そんな悲観的なことは言えないけれど。
 バスを降り、杉本さんに教えてもらった道順を逆にたどって、公園に着いた。今日も子どもたちが何人か遊んでいる。
 もしおじさんが来ても鉢あわせしないように、ふたりでジャングルジムに上った。あらためて杉本家を観察する。2階建てで、けっこう大きい。いくつかある窓にはすべてレースのカーテンがかかっていて、中は見えない。
「でかい家だな」
 俊太が言った。
「杉本さん、どんな反応するかな? お父さんが会いたがってますよって言ったら、びっくりするよな?」
「あんまりいきなりだと、警戒されちゃうかも」
 考え考え、千春は応えた。
「まず、こないだ道を教えてもらったお礼を言ったほうが自然じゃない?」
「そっか。長谷川、頭いいな」

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  • 瀧羽麻子

    瀧羽麻子

    1981年兵庫県生まれ。京都大学経済学部卒業。『うさぎパン』で第2回ダ・ヴィンチ文学賞大賞受賞。著書に『左京区七夕通東入ル』『左京区恋月橋渡ル』『左京区桃栗坂上ル』(小学館)『松ノ内家の居候』(中央公論新社)『いろは匂へど』(幻冬舎)『ぱりぱり』(実業之日本社)『サンティアゴの東 渋谷の西』(講談社)『ハローサヨコ、きみの技術に敬服するよ』(集英社)など。

    写真撮影/浅野剛

今日の1さつ

絵の”ニッコリ”した表情が好きなようです。鳥の親子の場面が一番反応がありました。(0歳・お母さまより)

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