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たまねぎとはちみつ

夏(4)

 屋根のないこぢんまりとした駐車場は、お店から歩いて三分ほどのところにあった。隅に一台だけ、白い軽トラックがひっそりととまっていた。
 近づいて見たら、ものすごくおんぼろだった。フロントガラスはほこりっぽく曇っているし、車体も全体にうす汚れ、あちこち傷がついている。
「これ、ちゃんと動くの?」
 俊太が疑わしげにたずねた。千春も口には出さなかったものの、同じことを考えていた。珍しく俊太と意見が合ってしまった。
「失礼なこと言うなよ。ヤエさんのご主人の愛車だぞ」
 主にお店の配達用に使っていたらしい。おじさんもここで働きはじめてから、何度か運転したことがあるという。
「荷物は後ろにのせよう」
 荷台の上にはすでに、角材やら、ポリタンクやら、ぐるぐる巻きにした防水シートのようなものやら、いろんなものがばらばらと置いてあった。俊太と千春が手分けして持ってきた紙袋と、自分で抱えていた段ボール箱を、おじさんが順に積みこんでいく。
 荷物を積み終えたところで、突如、俊太が宣言した。
「おれもこっちに乗る!」
「こっちって、荷台に?」
 おじさんが顔をしかめた。
「ひとは荷台に乗れないよ。おまわりさんに怒られる」
「そうなの? でもおれ、乗ってるの見たことあるよ」
「あれはな、積んである荷物が落ちないように見張ってるんだ」
 おじさんの答えを聞いて、俊太はにんまりと笑った。
「わかった。おれ、荷物を見張るよ」
「言うと思った」
 おじさんがあきれ顔で首を振った。
「気持ちはわからなくもないけどな」
 と、つけくわえる。
「おれも小学生だったら、断然こっちに乗りたいね」
「でしょ?」
「そんなに遠くもないし、まあ大丈夫か」
 行き先は、海である。夕方までには帰ってこられるというので、千春も連れていってもらうことに決めたのだった。

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  • 瀧羽麻子

    瀧羽麻子

    1981年兵庫県生まれ。京都大学経済学部卒業。『うさぎパン』で第2回ダ・ヴィンチ文学賞大賞受賞。著書に『左京区七夕通東入ル』『左京区恋月橋渡ル』『左京区桃栗坂上ル』(小学館)『松ノ内家の居候』(中央公論新社)『いろは匂へど』(幻冬舎)『ぱりぱり』(実業之日本社)『サンティアゴの東 渋谷の西』(講談社)『ハローサヨコ、きみの技術に敬服するよ』(集英社)など。

    写真撮影/浅野剛

今日の1さつ

絵の”ニッコリ”した表情が好きなようです。鳥の親子の場面が一番反応がありました。(0歳・お母さまより)

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