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北の森の診療所だより

第19回

1月 川底はもう春

暮れ。二つ玉低気圧とやらが、たて続けにやってきて、久しぶりに吹雪で車が立ち往生。久しく忘れていた40年程前の年末を思い出した。身動きできなくなった100台を越す車と一緒に一夜を明かした。不安というより大勢でワイワイやりながら楽しんだような気がする。
今年も同じでこの忙しいときに……とブツブツ言おうとしたが目の前の遊水池のハクチョウたちの群れは、なんだか楽しそうに見える。


年が明けるとお天道様はその代わりと考えたかどうか知らないが、おだやかな新年が続く。客が多いというので裏庭に車を置いたら、ある日「今年の客は早いですネ」とカミさんが言った。止めた車の下からエゾクロテンがのぞいている。おやおやと言いながら足跡をたどると近くに積んだ薪の中に穴が見えた。のぞくと目があった。「今年もよろしく」といったら、奥へ消えた。


裏のハギの茂みに数日前から客が立ち寄る。今年もミヤマホホジロ、オオマシコである。ある朝気づくとハギの実がひと粒も残っていなかった。これも例年の行事になっている。茂みがすっきりして新しい年を迎えていた。大陸から寒気団が南下して、また気温がぐんぐん低くなった。


そんな日、サケ、マス増殖センターの大木さんから電話。いつもサケの産卵をのぞかせてくれる人だ。「川底が賑やかになってます」というので、出かけることにした。秋の日々、数々のドラマの舞台がひっそりと冬の支配下にたたずむ。だが底をのぞくと、大木さんの言そのもの。石をそっとうごかすと、ゆらゆらと大きな卵黄をかかえて、稚魚が舞い上がった。目をこらすとあちこちの石のかげに赤い卵黄がある。


初めまして、と尾をふって挨拶している。川底はもう春であった。そう、自然はもう春のきたことを告げているのである。

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  • 竹田津 実

    竹田津 実

    1937年大分県生まれ。岐阜大学農学部獣医学科卒業。北海道東部の小清水町農業共済組合・家畜診療所に勤務、1972年より傷ついた野生動物の保護・治療・リハビリ作業を始める。1991年退職。1966年以来、キタキツネの生態調査を続け、多数の関連著作がある。2004年より上川郡東川町在住。獣医として、野生動物と関わり続けている。

今日の1さつ

娘がまだ0歳のときから読み聞かせています。本の絵、色、デザイン、こまかいところまで子どもは見逃さないんですね。親がスルーしてしまうところも気がつく、そんなおもしろさが子どもには魅力なんですね。絵本から子どもがはじめて学ぶことはたくさんあります。これからも愛読したい本です。(2歳・お母さまより)

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