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放課後の文章教室

第5回 自分を書く 2

詩を書くことは、自分を書くこと

「書くこと」について、若い人からの質問に、作家・小手鞠るいさんが答えます。

 いかがですか?
 世良さんも、詩人になれそうな気がしてきましたか?
 アンパンマンのやなせさんが保証してくれているのですから、心強いですね。
 この文章は『あなたも詩人 だれでも詩人になれる本』(かまくら春秋社)の第1部「詩への細道」の第2章に当たる「世の中に詩人になるほど簡単なことはない」からの抜粋です。
 この文章を読む限り、詩人になるのは、本当にかんたんそうです。
 世良さんが「僕は詩人だ」と宣言して、名刺に「詩人」と印刷してしまえばいいわけです。上手か下手か、書けるか書けないかも関係ないようです。
 「それで肩書は詩人になります」と書かれていますが、しかし最後に「詩人は肩書ではない」と、やなせさんは釘を刺しています。
 逆もまた真なり、でしょうか。
 やなせさんは、こう言いたいのではないでしょうか。
 誰でも好きなように詩を書くことができるし、なりたければかんたんに詩人にもなれる。詩とは自由で、柔軟性があり、間口が広くて、誰でも受け入れてくれるふところの深さを持っている。そして詩人とは、肩書や職業では決してなく、それらを超越したところにある、人の在り方、言ってしまえばその人の「生き方」そのものなんだよ、と。
 私にとって詩を書くということは、自分の思いを書く、すなわち「自分を書く」ということに、ほかなりません。
 私は毎日欠かさず、短い日記を付けていますし、ほとんど毎日、誰かにメール(=手紙)を書いています。朝、起きて顔を洗うのと同じように、夜、寝る前に歯を磨くのと同じように、私は詩を書いています。
 生きること、呼吸することと同じように、日記やメールや詩を書いているわけです。
 世良さんも、書いてみて下さい。
 朝、起きてスマホを見るのと同じように、詩を。
 今、世良さんのいる部屋、もしくは、乗っている電車の窓からは、どんな風景が見えていますか? 空は青いですか? 木には葉っぱが茂っていますか? 色は何色ですか?
 あなたの見ている風景を、ことばにして私に教えて下さい。
 1行か2行の短い文章でかまいません。
 次に、世良さんがその風景を見ながら「思っていること」を教えて下さい。
 たとえば何かに腹を立てている? だとすれば、原因はどんなこと? たとえばお腹が空いていて、食べ物のことを考えている? だとすれば、それはどんな食べ物ですか? その食べ物には何か、思い出がありますか?
 何も思っていないのであれば、そのことをことばで書いてみて下さい。
 これも1行か2行でかまいません。
 そうやって、短い文章を書き連ねているうちに、あなたの思っていることがだんだん広がっていったり、反対に、狭まってきたりするはずです。あるいは、思いもよらない方向に進みはじめたり。つまり、自分の思いになんらかの変化が起こる。もしも何も変化が起きなくても、それはそれでいいのです。
 変化が起きないということは、その思いが強い、ということの証拠なのですから。

 ここに、今から45年ほど前、私が17歳だったときに、おこづかいで買った詩集があります。
 『谷川俊太郎詩集』(角川文庫、昭和47年版)。
 とても古い本なので、ページが茶色くなっています。
 この中から、私の好きな1編をご紹介しましょう。

  これが私の優しさです

 窓の外の若葉について考えていいですか
 そのむこうの青空について考えても?
 永遠ときょについて考えていいですか
 あなたが死にかけているときに

 あなたが死にかけているときに
 あなたについて考えないでいいですか
 あなたから遠く遠くはなれて
 生きている恋人のことを考えても?

 それがあなたを考えることにつながる
 とそう信じてもいいですか
 それほど強くなつていいですか
 あなたのおかげで

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  • 小手鞠るい

    小手鞠るい

    1956年岡山県生まれ。1993年『おとぎ話』が海燕新人文学賞を受賞。さらに2005年『欲しいのは、あなただけ 』(新潮文庫)で島清恋愛文学賞、原作を手がけた絵本『ルウとリンデン 旅とおるすばん 』(講談社)でボローニャ国際児童図書賞(09年)受賞。1992年に渡米、ニューヨーク州ウッドストック在住。主な作品に、『エンキョリレンアイ』『望月青果店』『思春期』『アップルソング』『優しいライオン やなせたかし先生からの贈り物』『星ちりばめたる旗』『きみの声を聞かせて』など。

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