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放課後の文章教室

第5回 自分を書く 1

あなたもきょうから詩人

「書くこと」について、若い人からの質問に、作家・小手鞠るいさんが答えます。

––––僕はスマホべったりで、まともな文章をぜんぜん書いていません。でも『放課後の文章教室』をずっと読んできて、いい文章、というか、とにかく何か文章を書きたいという気持ちになってきました。まず何から、どういうふうに始めればいいでしょうか?

(世良タクト、一浪中、予備校生)

 世良さん、おたよりを下さって、ありがとうございます。
 『放課後の文章教室』を愛読していただけていること、とてもうれしく思います。
 そして「何か文章を書きたいという気持ち」になってきた、とのこと。実はそれこそが、この連載を始めた目的のひとつでもあるのです。
 何から始めたらいいのか。どういうふうに始めればいいのか。
 さっそくお返事いたします。
 世良さん、詩を書いてみて下さい。詩から、始めてみて下さい。
 たとえばきょう、予備校からの帰り道に、世良さんが考えたこと、思ったこと、感じたことを詩に書いてみて下さい。
 今「え? そんなこと、できないよ」って思いましたか?
 できないことはありません。できます。やってみて下さい。
 私がかわりに書いてみましょうか。
 タイトルは「模擬テスト」です。

 数学の模擬テスト
 むずかしかった
 英語の模擬テスト
 むずかしかった
 成績は悪い
 大学は遠い
 それでもがんばる
 なんのためなのか
 わからないけどがんばる
 青春の模擬テスト
 むずかしくて
 わからないことだらけ

 おそまつさまでした!
 でも「なぁんだ、こんなのでいいのか」と思って下さったなら、私の書いた詩は目的を果たせていますね。
 私はほとんど毎日のように、ツイッターに一編だけ、短い詩(140文字以内)を載せています。その日あったこと、その日の気持ち、思い出したり、考えたりしたことをさらさらっと詩に書いて発表しているのです。純粋に、自分の楽しみとして。
 かれこれ3年になるでしょうか。
 読んで下さった方からおたよりをいただくこともあって、とても楽しいひとときを過ごしています。世良さんにツイッターをすすめているわけではありませんが、こういう方法もあるのではないかと思います。
 「スマホべったり」から解放されるためには、詩のノートを作って、そこに手書きで書いていく、という方法もありますね。ノートの最後までページが埋まれば、世界に一冊しかない「世良タクト詩集」ができあがるでしょう。
 学生時代には、私もノートに手書きでせっせと詩を書いていました。
 現在は小説や童話を書いて生計を立てていますが、私はもともと投稿詩人として、スタートを切ったのです。
 そのときの恩師が、漫画家であり、絵本作家であり、詩人でもあった、やなせたかしさん。20代だった頃、私は、やなせさんが編集長を務める雑誌「詩とメルヘン」に詩を投稿していたのです。
 ここで、やなせたかしさんの書いた文章を読んでみましょうか。

 あなたがもし詩人になりたいとすれば、これは実に簡単なことです。おぼえることはただのひとつもありません。たとえば自動車の運転手になりたいとすれば、免許証がいります。学校の先生でも、またコックさんでも、マッサージをやるにしても、お医者さんでも、試験にパスして資格をとらなければなりません。
 画家ならせめて絵具ぐらいはぬれなければならないし、歌手ならまあ何とか音楽にあわせて歌えなくてはいけないので、素人のど自慢で、伴奏のはじまりのところがわからないひとは、やはり歌手とはいえません。
 詩人は誰でもいい。
 なんにもできなくていい。
 資格も免許証もいっさいありません。
 あなたが「私は詩人」といえば、それで詩人です。詩人になりたいという人は、今すぐ名刺に詩人と印刷してしまえば、それで肩書は詩人になります。
 詩が上手か下手か、
 かけるかかけないか、
 そんなこととは無関係に、
 とにかく、それであなたは詩人なのです。
 つまり詩人とは

『あなたも詩人 だれでも詩人になれる本』(かまくら春秋社)

 

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profile

  • 小手鞠るい

    小手鞠るい

    1956年岡山県生まれ。1993年『おとぎ話』が海燕新人文学賞を受賞。さらに2005年『欲しいのは、あなただけ 』(新潮文庫)で島清恋愛文学賞、原作を手がけた絵本『ルウとリンデン 旅とおるすばん 』(講談社)でボローニャ国際児童図書賞(09年)受賞。1992年に渡米、ニューヨーク州ウッドストック在住。主な作品に、『エンキョリレンアイ』『望月青果店』『思春期』『アップルソング』『優しいライオン やなせたかし先生からの贈り物』『星ちりばめたる旗』『きみの声を聞かせて』など。

今日の1さつ

娘に読ませたくて、ホームズの本を探しておりました。現代マンガ風の挿絵のものもある中、こちらは当時の雰囲気が伝わる本格的な感じで、字も読みやすく、8才の子でもふりがながのっているおかげで、ちゃんと読めたようです。今まで児童文学文庫=岩波少年文庫と思っておりましたが、偕成社文庫のラインナップが気に入り、書店ではまず、こちらの棚をのぞいております。

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