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放課後の文章教室

第3回 意見を書く 4

設計図と地図をたずさえて

「書くこと」について、若い人からの質問に、作家・小手鞠るいさんが答えます。

––––こんにちは。都内の私立女子大生(19歳)です。わたしは読書も大好きだし、文章を書くのも、わりと好きなほう。でも、自分の書いた文章をあとで読み返してみると、いつも必ず自己嫌悪におちいります。なんというか、ただ、だらだらと、うだうだと、どうでもいいようなことを書いているように見えちゃいます。どうすればもっと、すっきりした文章が書けるのでしょうか。書く前に、意見はちゃんとあったはずなのに、書いているうちに、自分でも自分の意見がわからなくなってくることも多いです。小論文の成績もいつも「優・良・可」の「可」止まりで情けないです(涙)。決められた枚数の中で、言いたいことをすっきり書ける方法を教えてください。

 19歳の私立女子大生さん、質問のメールをくださって、ありがとう。
 「うだうだ、だらだら」を「すっきり」に変えたい。決められた枚数の中で、言いたいことをすっきり書きたい。了解しました。
 本日のメインテーマは、文章の効果的なダイエット方法について、ですね。

 まず、私が小説を書く前に、いつもやっていることについて、お話ししましょう。
 短編小説を書くときにも、長編小説を書くときにも、同じことをしています。
 それは、小説の「設計図」をつくる、ということです。

 家を建てるために、建築家が作成する設計図のようなものです。とはいえ、私は実際に設計図を描いたことなどありませんが。たとえば、敷地はどれくらいで、何階建ての家で、間取りはどうなっていて、窓やドアはどこについているか、ガレージはあるか、庭はどこにどれくらいあるか、などなどが、図面に描かれているのが設計図ですね。サイズを示す細かい数字も書きこまれています。

 私は図面ではなくて、ことばで設計図を描きます。
 この小説の時代は? 舞台は? 登場人物は? 主人公は? 何歳くらい? 性格は?  性別は? 家族は? 仕事は? どんな事件が起こる? 作品の冒頭はどう始める? 結末はどうなる? 文体は? 常体(である・だ)か、敬体(です・ます)か。何枚くらいの作品にする? 章は何章くらい? タイトルは? 

 こういったことがらを、思いつくまま、断片的に、順番も気にしないで、どんどんノートに書き出していきます。とにかくどんどん書き出していくうちに、ばらばらだったイメージが、少しずつですが、ひとつにまとまり始めてきます。漠然とではありますが、小説が遠くにぼんやり「見えてくる」という感じになってきます。
 そうなったら、しめたものです。
 つぎは、そこへ向かって歩いていくための「地図」をつくればいいのです。
 地図とは「あらすじ」のことです。
 プロットとも呼ばれていますね。
 あらすじを漢字で書くと「粗筋=あらっぽい道筋」。つまり、あらすじをつくる、ということは、小説なり論文なりに「筋道をつける」ということ。
 筋道をつけて書く、ということはすなわち、論理的に書く、ということでもあります。 

 論理的に書く。このフレーズ、今までにも何度も出てきましたね。この文章教室の重要なキーワードです。論理的に書かれている文章は、非常に「すっきり」しています。これこそ、あなたの願いを満たした文章ですね。

 では、どんなふうにして、あらすじを立てたらいいのか。
 もっともかんたんなあらすじの立て方は、ずばり「起・承・転・結」です。
 始まりの章があり、その流れに乗って、その流れを受けてつづいていく章があり、流れが大きく変わる章があり、結末の章がある。
 いたってオーソドックスな地図です。オーソドックスですが、とても頼りになります。私もいつも頼りにしています。
 ところで、あなたの手もとには、すでに書かれている小論文がありますね。
 それを読み返しながら、「起・承・転・結」の4つのパートに分けてみてください。
 どこかが、あまりにも長すぎたり、短すぎたりしていませんか?
 4つのパートが入り乱れたり、前後したりして、ごちゃごちゃになっていませんか?
 「結」が欠けてはいませんか?

 そんなふうに検証しながら読み直してみると、どこをどのように整理すれば、あるいは刈りこめば、より良くなるのか、すっきりさせられるのか、ダイエットするべき場所がわかってくるはずです。
 今度、論文を書くときには、書く前に、設計図と地図を用意してみてください。
 用意した上で、自分の書いた文章が、それまでとはどう変わってきたか、検証してみてください。きっと、ずいぶんすっきりしていることでしょう。
 私の場合には、設計図も地図もあくまでも、大ざっぱです。かなり細かいところまで決まっている部分もありますが、だいたいは、大ざっぱ。書いているとちゅうで、どんどん変わってきます。それでいいのです。
 設計図にも地図にも、しばられる必要はまったくありません。目安であり、心がまえであり、道案内にすぎない。それでいいのです。
 できあがった作品が、設計図も地図も大きく超えていること、はるかにすばらしいものになっていること。それが私の目指している「森」です。
 人によっては、設計図も地図も持たないで、いきなり書いていく方が性に合っている、という人もいることでしょう。もしもあなたがそうであるなら、それはそれでかまいません。その場合は、最後まで書き終えてから、ダイエットしていけばいいのです。

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profile

  • 小手鞠るい

    小手鞠るい

    1956年岡山県生まれ。1993年『おとぎ話』が海燕新人文学賞を受賞。さらに2005年『欲しいのは、あなただけ 』(新潮文庫)で島清恋愛文学賞、原作を手がけた絵本『ルウとリンデン 旅とおるすばん 』(講談社)でボローニャ国際児童図書賞(09年)受賞。1992年に渡米、ニューヨーク州ウッドストック在住。主な作品に、『エンキョリレンアイ』『望月青果店』『思春期』『アップルソング』『優しいライオン やなせたかし先生からの贈り物』『星ちりばめたる旗』『きみの声を聞かせて』など。

今日の1さつ

2年生になり、漢字の覚えが悪いのと、字が汚いので、そのどちらも補えそうな本書を購入してみました。春休みは、宿題が少ないので、毎日やらせるのにちょうど良い分量で、とても良かったです。最初になぞって書くようになっているので、字もきれいになっている気がします。(読者の方より)

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