icon_twitter_01 icon_facebook_01 icon_youtube_01 icon_hatena_01 icon_line_01 icon_pocket_01 icon_arrow_01_r

放課後の文章教室

第3回 意見を書く 1

根を張って木を立たせる

「書くこと」について、若い人からの質問に、作家・小手鞠るいさんが答えます。

––––ぼくはじぶんでは、作文を書くのが得意で、将来は新聞か雑誌の記者、できたらノンフィクション作家になりたいと思っています。小・中を通して、作文コンクールでは何度か佳作に選ばれたことがありますが、最優秀賞は一度も取ったことがありません。どうすればワンランク上の文章が書けるのか、何か技術のようなものがあったら教えてください。去年のコンクールで佳作に選ばれた作品は「いじめについて」でした(岡山県倉敷市・中2男子)。

 倉敷市の中2男子くん、質問のお手紙、ありがとう。
 本題に入る前に、ひとこと。

 作文コンクールで最優秀賞を取りたい、将来はノンフィクション作家になりたい、というきみの志を、私は応援します。どちらも、すばらしい目標だと思う。私も中学時代には「小説家になりたい」と願いながら、作文を書いていました。大人になってから「なれっこない」とあきらめていた時期もありましたが、今は、あきらめないでよかったなぁと思っています。
 あこがれの職業とは、きみの人生を照らす月の光のようなものです。
 志を持って、文章を書く。それだけで、きみの書く文章には一本の筋が通ります。

 まずはそのことをお伝えしておいて、本題に入ります。

 きみの望んでいる「ワンランク上」ということばは、具体的にはどんな状態を意味しているのでしょうか。おそらく、きみの書いた作文を私が読んでみれば、その答えがより明確にわかるのかもしれませんが、ひとまず「もっと良い文章を書きたい」という願望だと受け止めて、話を進めていきます。

 「良い文章」を、私のことばで言いかえると、それは「健全な文章」ということになります。元気で、すこやかで、のびやか。堅実で、誠実で、前向きな文章、とも言えるでしょうか。それは同時に、第1回でもお話ししたように、論理的な文章、ということでもあります。

 ここで、心の中に、一本の木を思い浮かべてみてください。
 元気で、すこやかで、のびやかな一本の木。幹は太くてまっすぐで、四方八方に広げた枝に、生き生きした葉っぱをたくさんつけて、すっくと立っています。

 そのように、木が元気で立っているためには、何が必要でしょうか?
 幹や枝を伸ばし、葉を茂らせるために、必要なものは?
 そう、根ですね。栄養を吸い上げることのできる根。
 地中深く、しっかりと張りめぐらされている根があるからこそ、木は、たとえ悪天候になっても、ちょっとやそっとのことでは、倒れないでいられます。

 文も、木と同じです。
 根っこがしっかりしていなければ、どんなにことばを書きつらねても、どんなに形容詞で飾りたてても、その一文は、あっさり倒れてしまいます。つまり、読んだ人に何も伝わらないのです。

 ごぞんじの通り、文章は、文の集合体です。木が集まって森ができているように、文章も文が集まって、できています。
 根のない文が多ければ多いほど、文章は弱くなっていきます。きみのことばを借りるなら、ワンランク下の文章になっていきます。

 ところで、きみは去年「いじめについて」書いた、とのことですが、その作文を通して、きみが伝えたかったことは、どんなことですか?
 つまり、いじめに対して、きみはどんな意見を持っているのでしょう?
 いじめに対するきみの意見。
 それが、きみの書いた作文を構成している、すべての文章、すべての文に生えているべき根なのです。
 もしもその作文が手もとにあるのであれば、一文一文を読みかえしながら、それぞれの文に根がきちんと張っているかどうか、きびしく、検証してみてください。
 根の弱い文は、ありませんか?
 たとえば、意見があるのに、じゅうぶんに表現できていない文。
 根がまったく張っていない文は、ありませんか?
 たとえば、意見などないのにあるようなふりをして書いている文、あるいは、他人の意見を自分の意見であるかのように書いている文。
 まず、そういう文を見つけてください。見つけたら、書き直してください。補強する必要があるときには、補強してください。

 例を示してみましょうか。

(1)いじめはなくならない。
これは、根の弱い一文です。だれがそう思っているのか、これはだれの意見なのか、この文だけではわかりません。
(2)いじめはなくならないと、ぼくは思っている。
(3)いじめはなくならないと、友人は言う。でもそれは違うとぼくは思う。
(4)いじめはなくならないなんて、ぼくは思いたくない。なくすためにはどうするべきか、ぼくは考えつづけたい。

 (2)から(4)までの文には、それぞれ根が張っていますね。
 もちろんこの三つだけが正解なのではありません。優劣もありません。
 森に生えている木が一本一本、異なっているように、文もまた、書く人によって異なってきます。きみの書いた文に、きみの意見––––いじめに対する––––がしっかりと宿っていれば、それが正解なのです。

バックナンバー

profile

  • 小手鞠るい

    小手鞠るい

    1956年岡山県生まれ。1993年『おとぎ話』が海燕新人文学賞を受賞。さらに2005年『欲しいのは、あなただけ 』(新潮文庫)で島清恋愛文学賞、原作を手がけた絵本『ルウとリンデン 旅とおるすばん 』(講談社)でボローニャ国際児童図書賞(09年)受賞。1992年に渡米、ニューヨーク州ウッドストック在住。主な作品に、『エンキョリレンアイ』『望月青果店』『思春期』『アップルソング』『優しいライオン やなせたかし先生からの贈り物』『星ちりばめたる旗』『きみの声を聞かせて』など。

今日の1さつ

表紙の絵やとちゅうの絵がかわいいのでレンちゃんや高田さんの気分になれて本の中の世界にすいこまれるのでドキドキハラハラしておもしろかったです。(9歳)

pickup

new!新しい記事を読む