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放課後の文章教室

第2回 友情を書く 5

感謝と思いやりをこめて

「書くこと」について、若い人からの質問に、作家・小手鞠るいさんが答えます。

 さて、悩める十代の女子大学生さん、あなたにはもう、あなたを傷つけるようなメールに「どう対抗したらいいのか」がわかったでしょうか。
 そう、対抗しないこと。反応しないこと。
 これが正しい答えです。
 怒りに怒りで対抗しても、怒りはおさまるどころか、ふくらむだけ。悪口に対して、悪口を言いかえしても、仲は悪くなるだけです。
 私もつい最近、メールではなくて口頭で言われた友だちのことばに傷つけられて、夜も眠れなかったことがありました。
 友だちなのに、なぜ?
 なぜ、あんなことを?
  何度も何度も、そう思いました。
 でも、私が何度、そう思っても、いったん口から出たことばは、その人の口にはもどりません。湖に投げこまれた小石を手でとりのぞこうとしても、湖面には波が立つだけなのです。 
 それなら、どうすればいいの?
 放っておくしかありません。
 放っておけば、そのうち、波は静まります。かならず静まります。そのときが来るまで、じっと待つのです。もしもその人とずっと、友だちでいたいと思っているならば。
 あなたが、私が、傷つけられたように、あなたも私も、知らないうちにだれかを傷つけるようなことを書いたり、言ったりしているかもしれません。
 
 メールを書くときに私がもうけている決まりをもうひとつ。
 感謝と思いやりをこめて書く。
 メールに限らず、手紙を書くときにも、電話で話すときにも、この決まりを守るように努力しています。友だちだけではなくて、知りあいに対しても、仕事仲間に対しても。メールを受けとった人が、笑顔で読めるような文章を書こう、と。相手の笑顔を想像しながら、書くようにしています。
 もちろん、その気持ちが相手に伝わるかどうかは、わかりません。わかりませんが、とにかく気持ちだけはこめる。逆の言い方をすれば、こめる気持ちがないときには、無理にこめなくてもいいのです。ことばにできない気持ちは、無理にことばにしなくてもいいのです。
 が、もしもそういう気持ちが少しでもあるのなら、どんなメールにも「ありがとう」という感謝の気持ちをこめて書く。
 自分のことよりも、相手のことを思いやり、相手のことを優先して、書く。
 書いた人があたたかい気持ちでいたなら、読んだ人はとうぜん、あたたかい気持ちになります。あなたの感謝や思いやりの気持ちは、相手をあたたかい気持ちにするだけではなくて、あなた自身の心も、あたためてくれます。
 互いのことばで、互いをあたためあうことのできる関係。それこそが、ほんものの友情ではないでしょうか。
 最後に、お寺の住職であり、庭園デザイナーでもある升野俊明さんの書いた文章を読んでみてください。『おだやかに、シンプルに生きる』(PHP文庫)からの引用です。
 
 言葉のやりとりというものは、ひとりではできません。あなたが発した言葉に鋭い刃があれば、それはそのままあなたのところに返ってきます。自分で自分を傷つけているのと同じなのです。あなたが言葉を丸くすることで、きっと相手の言葉も変わってくるでしょう。あなたが思いやりある言葉を発すれば、必ず相手の心も優しくなってくるものです。
 あなたが「愛語」で接してもなお、相手が言葉の刃を向けてくるのであれば、そんな関係は切ってしまってもいいのではないか、私はそう思います。
 
 私もそう思います。
 「愛語」とは「触れ合う人たちに思いやりの心をもって接しなさい。相手の気持ちを思い、優しい言葉をかけなさい」という道元禅師(1200〜1253)の教えです。

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profile

  • 小手鞠るい

    小手鞠るい

    1956年岡山県生まれ。1993年『おとぎ話』が海燕新人文学賞を受賞。さらに2005年『欲しいのは、あなただけ 』(新潮文庫)で島清恋愛文学賞、原作を手がけた絵本『ルウとリンデン 旅とおるすばん 』(講談社)でボローニャ国際児童図書賞(09年)受賞。1992年に渡米、ニューヨーク州ウッドストック在住。主な作品に、『エンキョリレンアイ』『望月青果店』『思春期』『アップルソング』『優しいライオン やなせたかし先生からの贈り物』『星ちりばめたる旗』『きみの声を聞かせて』など。

今日の1さつ

表紙の絵やとちゅうの絵がかわいいのでレンちゃんや高田さんの気分になれて本の中の世界にすいこまれるのでドキドキハラハラしておもしろかったです。(9歳)

pickup

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