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放課後の文章教室

第1回 気持ちを書く 1

ショートケーキと感想文

 「書くこと」について、若い人からの質問に、作家・小手鞠るいさんが答えます。

––––はじめまして。わたしは、神戸に住んでいる中学2年生です。本を読むのは好きなのですが、感想文を書くのがとても苦手です。毎年、夏休みが来るたびに、ああ、宿題の感想文、いやだなと頭をかかえています。あらすじを書くのもむずかしいです。感想文には絶対、あらすじがあったほうがいいですか? わたしの場合、書いているうちに、あらすじだけで感想文が終わってしまうこともあります。

 質問のお葉書をくださって、ありがとう。
 子どもたちや若い世代に、本を好きになってほしい、読書の喜びを味わってほしいという願いをこめて、先生をはじめとする大人たちは「感想文を書きなさい」と言っているに違いないのに、その感想文があなたたちにとって重荷になり、好きだった読書や、もしかしたら、好きだった作文まできらいになっているのだとしたら、これはたいへん残念なことです。  
 中学時代、私は感想文を書くのが大好きでした。というよりも、感想文でもなんでも、とにかく書くことが好きで好きでたまらなかったのです。
 そんな私から、感想文が苦手なあなたに「感想文を書くのは楽しい!」と思ってもらえるような話をしましょう。
 
 あなたは、ケーキが好きですか?
 たとえば、いちごのショートケーキ。
 お皿にのせられ目の前に置かれている、いちごのショートケーキを思い浮かべてみてください。フォークで切り分けて、あなたはケーキをひと口、食べました。
 さあ、どんなことを感じましたか?
 おいしい? おいしくない? あまい? あますぎる?  
 どう感じるかは、人によって違います。でもきっと何かを感じたはず。
 あなたがケーキを食べて感じたこと。それがケーキに対する「感想」です。
 では、いちごのショートケーキを「おいしい」と感じたあなたに質問します。
 なぜ、おいしいと感じたのでしょうか。
 ちょうどいいあまさだったから。あまいものが好きだから。カステラがふわふわで、舌ざわりがよかったから。カステラとカステラのあいだのクリームがなめらかで、口のなかで、とろけそうだったから。いちごとカステラとクリームが混ざりあったときの味が、なんとも言えず、おいしかったから。
 こんなふうに、「おいしい」と感じる理由もまた、人によってさまざまに異なります。舌で味わう感覚だけではなくて、いちごの色がきれいだから、いちごとクリームのかおりがすてきだから、と、目や鼻でおいしさを味わう人もいるでしょう。ケーキに添えられていた紅茶がおいしかったから、だからケーキまでおいしく感じられた、という人だっているかもしれません。
 
 さて、次の質問。
 あなたはおいしいケーキをすっかり食べ終えました。
 今、どんなことを思っていますか?
 おなかがいっぱいになって、幸せな気持ちになった。1個じゃ足りない、もっと食べたい。ケーキを買ってきてくれたおばあちゃん、大好き。このケーキ、友だちにもプレゼントしたい。今度は同じお店の別のケーキを食べてみたい。自分でこんなケーキをつくってみたい。どうやったら、こんなおいしいケーキがつくれるんだろう。だれがつくったんだろう。カステラには、何と何と何が入っているんだろう。
 やっぱり人によって、それぞれに違った思いをいだくことでしょう。
 ケーキを食べ終えて、思ったこと(=想ったこと)。つまり、どんな気持ちになったか。これもまたケーキに対する「感想」です。
 もうおわかりですね?
 ここで、ケーキを本に置きかえてみてください。
 本を読み始めたとき、あるいは、読んでいるさいちゅう、読み終えたとき、あなたはどんなことを感じて、どんな気持ちになりましたか? うれしくなった? 悲しくなった? 驚いた? それは、なぜですか?
 ただ、もやもやした気持ちになった。だとすれば、なぜもやもやしているのか、その理由を頭で考えて書いてみてください。
 無理に感動する必要なんてないのです。どんな気持ちでもいい。その作品に対するあなたの気持ちを文章で書きあらわしたもの、それが感想文なのです。
 むずかしいと感じたら、いちごのショートケーキを思い浮かべてみて。
 感想文を書くのは「おいしそう」って、思ってもらえたでしょうか?
 では次に、もっとおいしい「あらすじの書き方について」お話ししましょう。 

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profile

  • 小手鞠るい

    小手鞠るい

    1956年岡山県生まれ。1993年『おとぎ話』が海燕新人文学賞を受賞。さらに2005年『欲しいのは、あなただけ 』(新潮文庫)で島清恋愛文学賞、原作を手がけた絵本『ルウとリンデン 旅とおるすばん 』(講談社)でボローニャ国際児童図書賞(09年)受賞。1992年に渡米、ニューヨーク州ウッドストック在住。主な作品に、『エンキョリレンアイ』『望月青果店』『思春期』『アップルソング』『優しいライオン やなせたかし先生からの贈り物』『星ちりばめたる旗』『きみの声を聞かせて』など。

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