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あららのはたけ

第10回

ジャガイモの母

エミへ

 こないだの手紙、しょうげき的だった。こちょこちょなんて、すごいよ。ほんと、あたしだったら、目の前にケンちゃんの足がにゅっと出てきたら、びびる。にげだしちゃうかも。エミのこちょこちょは、ぜったいよかったと思う。わたし、わかるもん。けんちゃんって、ものすごく足速かったし、サッカーもやってたんだから、ほんとにいやだったら、エミのことけりとばして、さっさと足ひっこめてたはず。

 うまくいえないけど、エミ、ありがと。

 わたしたち、とうとう5年生だよ。

 5年生になったとたん、学校の仕事もいろいろやらなくちゃならなくなってきたね。わたしは「全校活動係」っていうのになりました。夏休みに1年生から6年生までが全員であつまって、なにか楽しいことの計画をする係。1年生は野菜を食べない子が多いから、野菜パーティーをすることに決まり。「残食ゼロ」をめざして、「野菜いっぱいカレー」と「野菜いっぱいサラダ」をつくってみんなで食べるんだ。野菜は、できるだけ家からもってくることにしようっていうことになって、わたしはジャガイモの収穫がちょうどまにあいそう。父さんの手伝いをして、いっぱい植えたから。

 縦30メートル以上ある畑に、わたしと母さんで、種イモをぜんぶ植えたんだよ。きっちり30センチずつあいだをあけて。母さんは植えてるあいだじゅう、腰がいたい、背中がバリバリだ、ダンゴムシが出てきたってブツブツいいっぱなし。結局わたしが5列植えて、母さんは2列だけ。なのに「こんな大変なことするぐらいだったら、スーパーで買ったほうがまちがいなくかしこいわ」だって。でも、父さんは、母さんといっしょに畑にいるだけでうれしそうだった。

 ようやく終わって帰ろうと思ったら、父さんがビニールの大きなつつみたいなのをもってきて、「まだおわりじゃない。つぎはマルチをはるぞ。あっというまに草ぼうぼうになるからな」っていった。マルチってわかる? うねの表面を黒いビニールでおおっていくの。そして、芽が出てきたら、そこだけカッターで切りとって芽をのばしていくわけ。

 ここで母さん、完全にキレちゃった。「じょーだんじゃないわ。わたしの植えたこの2列は、このままでけっこう! マルチなんてめんどうくさいこと、やりません!」ってさけんで、さっさと畑をおりていっちゃった。わたしだって自分のぶんの5列、マルチをはりおえたときにはもうたおれそう。母さんの2列はそのまんまになっちゃった。父さんも、それでいい、っていったしね。

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  • 村中李衣

    村中李衣

    1958年山口県生まれ。児童文学者。大学、大学院で心理学、児童文学を学ぶ。著書に『小さいベッド』(サンケイ児童出版文化賞)『おねいちゃん』(野間児童文芸賞)『チャーシューの月』(日本児童文学者協会賞)『かあさんのしっぽっぽ』(青少年読書感想文全国コンクール課題図書)など多数。創作活動とともに、小児病棟や刑務所、少年院、養護施設などでの絵本の読み合いに取り組み、絵本を声に出して読むことを通じて自分の思いを家族に送り届ける「絆プログラム」を実施中。

  • 石川えりこ

    石川えりこ

    1955年福岡県生まれ。横浜市在住。広告代理店でデザイナーを経てフリーのイラストレーターへ。絵本・児童書挿絵をはじめ、書籍装画、雑誌・広告など多方面で活躍中。『ボタ山であそんだころ』で第46回講談社文化賞絵本賞受賞。著書は他に『あひる』(くもん出版)『てんきのいい日はつくしとり』『ことしのセーター』(福音館書店)『またおこられてん』(文:小西貴士、童心社)『流木のいえ』(小学館)など。

今日の1さつ

2年生になり、漢字の覚えが悪いのと、字が汚いので、そのどちらも補えそうな本書を購入してみました。春休みは、宿題が少ないので、毎日やらせるのにちょうど良い分量で、とても良かったです。最初になぞって書くようになっているので、字もきれいになっている気がします。(読者の方より)

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