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あららのはたけ

第8回

もしもし、おうとうせよ!

エミへ

 エミったら、びっくりするようなことやっちゃうのね。でも、「あんたの左足」って、それはないんじゃないの? わたしの左足は、エミのみたいにぶっとくないもん! それに、足のうら、真っ黒だったりしてなかったでしょうね? 考えただけで、はずかしくて、穴の中に入りたいぐらいだわ。いや、穴の中はだめだめ。

 いま、うちの家のまわり、モグラがほった穴だらけなの。モグラって、わたし、てっきり冬眠するもんだと思ってた。だってほら、「おやゆびひめ」に出てくるモグラのだんなって、冬眠してたじゃない。サングラスかけてて、すごくいやなやつ。

 でも、実際は1年中ずーっとミミズをさがして動き回ってるの。それで、おなかいっぱいになってもひたすら食べつづけるの。1日でも食べないと死んじゃうんだって。だから、トンネル穴をほってほって、ほりまくる。それで、せっかく植えたじいちゃんの野菜たちは、根っこをちぎられてかれちゃうし、わたしが植えたチューリップの球根も、うきあがっちゃった。

 すごくくやしかったんだけどね、ふと思ったことがあるの。モグラはね、たぶん1年じゅう、頭の中がミミズのことでいっぱいなんだと思う。「食べてやるぅ! どこだ! どこだ!」ってね。でも、食べられるミミズの頭の中は、いくらこわくても、モグラのことなんかでいっぱいには見えない。ミミズの頭の中は、もっとゆるりんとしたゼリーみたいな夢でできてる。そう考えたら、モグラとミミズ、かわいそうなのはどっちなんだろう。きっと、ミミズの心のほうが自由な気がする。

 エミの手紙を読みながら、おかしいかもしれないけど、けんちゃんママも、それから、カズホたちも、けんちゃんのことをおいかける、モグラみたいだなって思った。だとしたら、けんちゃんも、ミミズみたいにゆるりんとしてたらいいのに。でも、けんちゃんは、おとなしいけど、めっちゃ足が速かったから、ミミズっていうのは、ちがうよね。わたし、なにいってるんだろ!

 じつはね、エミの話がしょうげき的すぎて、書こうかどうしようかまよってたんだけど、わたしも思いきって、まるもさんに話しかけてみたの。「クラスのみんなと、もっとちゃんと話してみたら?」って。そしたら、あっさり「そういうの、きょうみありません」ってことわられちゃった。モグラのえりは、ミミズのまるもさんに、完全にやられましたぁ。

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  • 村中李衣

    村中李衣

    1958年山口県生まれ。児童文学者。大学、大学院で心理学、児童文学を学ぶ。著書に『小さいベッド』(サンケイ児童出版文化賞)『おねいちゃん』(野間児童文芸賞)『チャーシューの月』(日本児童文学者協会賞)『かあさんのしっぽっぽ』(青少年読書感想文全国コンクール課題図書)など多数。創作活動とともに、小児病棟や刑務所、少年院、養護施設などでの絵本の読み合いに取り組み、絵本を声に出して読むことを通じて自分の思いを家族に送り届ける「絆プログラム」を実施中。

  • 石川えりこ

    石川えりこ

    1955年福岡県生まれ。横浜市在住。広告代理店でデザイナーを経てフリーのイラストレーターへ。絵本・児童書挿絵をはじめ、書籍装画、雑誌・広告など多方面で活躍中。『ボタ山であそんだころ』で第46回講談社文化賞絵本賞受賞。著書は他に『あひる』(くもん出版)『てんきのいい日はつくしとり』『ことしのセーター』(福音館書店)『またおこられてん』(文:小西貴士、童心社)『流木のいえ』(小学館)など。

今日の1さつ

おかしがたくさん、おいしそうに描かれており娘は楽しそうに読んでおりました。親の私は、前作では小さな子どもだった4羽の子がらす達が大人になり、独立していく姿に感動して涙が出ました。(2歳・お母さまより)

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