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あららのはたけ

第8回

もしもし、おうとうせよ!

 けんちゃんの部屋のまえには、幼稚園のときとおんなじ、ピエロの人形がついたドアプレートがかけてあった。どんどんノックしたけど、返事はなし。「けんちゃん、けんちゃん、渡したいものがあるの、あけてよ。エミだよ」っていってみたけど、ドアはあかなかった。後ろを追いかけてきたけんちゃんママが「あたしたちがよんでも、出てきてくれないの」って首をふるから「でも、トイレとかごはんのときとかは出てくるんでしょ? あたし、ずっと待ってます」って、わざとけんちゃんに聞こえるような大きな声でいいかえした。いいかえしながらね、ほんとうは(こんなふうにまちぶせして、あたしいったい、なにをけんちゃんに伝えるつもりなんだろ)って、わからなくなっちゃってたんだ。

 そのとき、うしろから、ねこの与作がすうっとやってきて、ドアの下のところの四角い窓を鼻の先でカタンとおして、そのまんま中へ入っていっちゃった。あたしたちがさんざんいじりまわして遊んでた、あの与作だよ。赤ちゃんだったのにねえ。それで、あたしも四つんばいになって窓から「けんちゃーん」っていいながら中をのぞきこんだわけ。そしたら、窓のむこう側から、ダンボールの箱でふたをされちゃった。ひどいよね、与作は中に入れてやってるのに、あたしのことは拒否するなんて。ようし、そっちがその気ならって、急いでくつしたぬいで、下の窓から、えいって右足つっこんでみたの。つっこんで、ダンボール箱をぐいーっておしちゃった。

「おーい、けんちゃん、あそぼ、あそぼ」って、むかしよくやってたみたいに、足の指をピロピロひろげて動かしながらね。

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  • 村中李衣

    村中李衣

    1958年山口県生まれ。児童文学者。大学、大学院で心理学、児童文学を学ぶ。著書に『小さいベッド』(サンケイ児童出版文化賞)『おねいちゃん』(野間児童文芸賞)『チャーシューの月』(日本児童文学者協会賞)『かあさんのしっぽっぽ』(青少年読書感想文全国コンクール課題図書)など多数。創作活動とともに、小児病棟や刑務所、少年院、養護施設などでの絵本の読み合いに取り組み、絵本を声に出して読むことを通じて自分の思いを家族に送り届ける「絆プログラム」を実施中。

  • 石川えりこ

    石川えりこ

    1955年福岡県生まれ。横浜市在住。広告代理店でデザイナーを経てフリーのイラストレーターへ。絵本・児童書挿絵をはじめ、書籍装画、雑誌・広告など多方面で活躍中。『ボタ山であそんだころ』で第46回講談社文化賞絵本賞受賞。著書は他に『あひる』(くもん出版)『てんきのいい日はつくしとり』『ことしのセーター』(福音館書店)『またおこられてん』(文:小西貴士、童心社)『流木のいえ』(小学館)など。

今日の1さつ

通院していた助産院でくいつきがよく、月齢の小さいころから見ていました。先日助産院最後の通院の日、たくさんある本棚の絵本からこれを探し出して、やっぱり何度も見ていたみたい。もう赤ちゃんも卒業かな?と思っていたのですが、まだまだこの絵本に魅力を感じている息子に2歳前ですが、買いました。かってよかった…。(1歳 ご家族より)

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