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あららのはたけ

第7回

春よ、くるならこい!

エミへ
キャベツの花をながめるえり あけましておめでとう。年賀状の代わりに書いてます。こっちは、ずうっとあったかいよ。寒くなくてよかったはずなのに、父さんのご機嫌は悪いの。白菜を去年のうちにぜんぶ収穫しないで、畑に残しておいたから。外側の葉っぱをひもでしばって寒さよけしてればだいじょうぶなはずだったんだけど、今年は想像以上にあったかすぎて、このまんまじゃ花が咲いてしまうかも、って。花がさいたら、葉っぱはおいしくないらしい。でも、白菜の花を食べるのもなんだかおもしろそうだけど。
 畑で保存派の父さんとちがって、母さんはなんでも冷凍派。年末に食料を買いだめしすぎて、その残りを片っぱしから冷凍しちゃおうとしたの。このあたりにはコンビニとか24時間営業のスーパーとかないし、祝日にはどこのお店も閉まっちゃうのが母さんには恐怖みたい。でもね、入らないわけ、冷凍庫の中がいっぱいで。しかたなく片づけたことのない冷凍庫の中を整理してみたら、おととしばあちゃんがつくってフリーザーバックで保存していた「フキノトウみそ」が出てきたの。
「やだ、おととしのだなんて」って、母さんそのままごみ箱にポイしちゃった。それをじいちゃんがみつけて、めずらしく怒った。ほんとに、あんなに怒るじいちゃんはじめて見た。

帰ってきたおじいちゃん

「なんてことをするんだ。ねかせるほど味がやわらいでうまくなるっちゅうのに。年のはじめには、こういうもんを食ってからだの毒を出さにゃならん。そういうことをきっちり算段して、ばあさんが、自分が死んだあとのぶんもつくっておいてくれたんだ。こういう食べもんは、1年たっても2年たっても生きてるんだ」ってね。
 おばあちゃんの代わりに生きているみそ。母さんもわたしも、ばあちゃんのふきのとうみそをだまって食べた。
 苦くてあまくてやっぱり苦くて、ふぁんと鼻にぬける香りがした。母さん「おいしいです。ごめんなさい」って、じいちゃんにあやまった。そのあとじいちゃん、ふいっていなくなったんだけど、夕方カゴいっぱいのフキノトウつんで山からもどってきた。

スマホを片手にもつえりのお母さん

「これからは、あんたにつくってもらえっかな?」って。母さん、すなおにハイって返事してた。じいちゃんはうれしそうで、「どうれ、そんじゃおれがつくりかた教えっから」って。でもね、母さんこっそりわたしに「スマホのアプリで検索できるし教えてもらわなくても平気なんだけど」なんていうんだよ。「しーっ」だよね、まったく。

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  • 村中李衣

    村中李衣

    1958年山口県生まれ。児童文学者。大学、大学院で心理学、児童文学を学ぶ。著書に『小さいベッド』(サンケイ児童出版文化賞)『おねいちゃん』(野間児童文芸賞)『チャーシューの月』(日本児童文学者協会賞)『かあさんのしっぽっぽ』(青少年読書感想文全国コンクール課題図書)など多数。創作活動とともに、小児病棟や刑務所、少年院、養護施設などでの絵本の読み合いに取り組み、絵本を声に出して読むことを通じて自分の思いを家族に送り届ける「絆プログラム」を実施中。

  • 石川えりこ

    石川えりこ

    1955年福岡県生まれ。横浜市在住。広告代理店でデザイナーを経てフリーのイラストレーターへ。絵本・児童書挿絵をはじめ、書籍装画、雑誌・広告など多方面で活躍中。『ボタ山であそんだころ』で第46回講談社文化賞絵本賞受賞。著書は他に『あひる』(くもん出版)『てんきのいい日はつくしとり』『ことしのセーター』(福音館書店)『またおこられてん』(文:小西貴士、童心社)『流木のいえ』(小学館)など。

今日の1さつ

通院していた助産院でくいつきがよく、月齢の小さいころから見ていました。先日助産院最後の通院の日、たくさんある本棚の絵本からこれを探し出して、やっぱり何度も見ていたみたい。もう赤ちゃんも卒業かな?と思っていたのですが、まだまだこの絵本に魅力を感じている息子に2歳前ですが、買いました。かってよかった…。(1歳 ご家族より)

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