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あららのはたけ

第5回

風のぬけ道、とおり道

エミへ
 「エミちゃんのママから心配の電話もらった」って、母さんがいってた。ほんと、今回の台風はびっくりだった。こっちはあんまり高い建物とか看板とかないし、ガラスがわれて破片がとんでくるみたいなのはないけど、裏山がね、ごうごうほえる。夜、その声を聞くと、「おまえなんかひきずりこんでやるううう」って真っ黒いうずまきがどんどん広がっていく。母さんもこわすぎて頭がどうかしちゃったみたい。どうでもいいようなことで、父さんにがみがみいってた。「ほらみなさい、停電になったら携帯の充電ができないからあれほど電池式の充電器を買っておくべきだっていったじゃない」、「いまからじゃネットで買ってもまにあわない、第一パソコンの充電も切れちゃうかも……」。やつあたりだよね、ぜったい。

 そうそう、そんなことよりもっとびっくりしたことがあったよ。じいちゃんが、台風がひどくなる前に、父さんといっしょに農園の作業小屋に行ってみるっていうから、わたしも気になってついていってみたの。うちの作業小屋、トラクターとか入れてる大きなのと、作業道具を入れてる小さいのとふたつあるんだけどね、てっきり、横浜の家でそうしてたみたいに、窓やドアに板をうちつけるんだと思った。でもね、そのどっちものドアと窓をあけっぱなしにしたの! ドアはドタンバタンしないように、じょうぶなひもでくくりつけてね。

小屋のまえにいる3人

「な、なんであけるの! こわれちゃうよ! わたしの赤い長ぐつとかバケツとかも入ってるのに」

 わたしがさけんだら、じいちゃんが笑っていったの。

「風の抜け道をつくっておいてやらんと、こんなちっぽけな小屋はふっとんじまうぞ。」

 台風がすぎたあと、4人で(あ、このときは母さんも手伝ったんだ)、小屋の中にちらばった木の枝とか葉っぱとかを掃除したんだよ。そしたらわたしの赤い長ぐつもバケツも無事だった。じいちゃんのいうとおりだった。

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  • 村中李衣

    村中李衣

    1958年山口県生まれ。児童文学者。大学、大学院で心理学、児童文学を学ぶ。著書に『小さいベッド』(サンケイ児童出版文化賞)『おねいちゃん』(野間児童文芸賞)『チャーシューの月』(日本児童文学者協会賞)『かあさんのしっぽっぽ』(青少年読書感想文全国コンクール課題図書)など多数。創作活動とともに、小児病棟や刑務所、少年院、養護施設などでの絵本の読み合いに取り組み、絵本を声に出して読むことを通じて自分の思いを家族に送り届ける「絆プログラム」を実施中。

  • 石川えりこ

    石川えりこ

    1955年福岡県生まれ。横浜市在住。広告代理店でデザイナーを経てフリーのイラストレーターへ。絵本・児童書挿絵をはじめ、書籍装画、雑誌・広告など多方面で活躍中。『ボタ山であそんだころ』で第46回講談社文化賞絵本賞受賞。著書は他に『あひる』(くもん出版)『てんきのいい日はつくしとり』『ことしのセーター』(福音館書店)『またおこられてん』(文:小西貴士、童心社)『流木のいえ』(小学館)など。

今日の1さつ

まだ1歳ですが絵本が好きなので、絵がきれいなものを探していて、気に入り購入しました。いろんな世界のいえがとてもステキで、大人になるまで大切にしたい一冊になりました。たくさん読んであげたいです。(読者の方より)

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